中国の新車市場「急減速」の中で分かれる明暗 市場の9割を占めるセダンやSUVの苦戦続く

拡大
縮小

消費マインドの低下が中国の新車市場に大きな影響を与えている。中国経済状況の変化、米中貿易摩擦が内外要因として挙げられる。

中国では金融規制の強化によるシャドーバンキングの縮小や、地方政府のインフラ投資の抑制によって、多くのインフラ整備関連投資が停止し、民営企業も深刻な資金繰り難に陥った。株価の低迷や人民元安に加え、企業業績の低迷および消費者心理の悪化が、家計支出に占める割合が大きいクルマの購入を抑制した。2019年9月の中国小売総額を見ると、全体は9.2%増であったのに対し、自動車関連は前年同期比7.1%減となった。

一方、中国主要70都市の不動産価格は上昇し続け、とくに自動車販売を牽引する沿海部の中小都市や中西部の都市で上昇が際立つ。引締め政策を実施した北京、上海、広州、深圳など4大都市の新築住宅価格は前年比4%上昇にとどまっているものの、その他66都市は前年比9%の上昇を見せた。

不動産価格のさらなる上昇が懸念される中、前倒しで住宅を購入する家庭が増加。クルマ購入など大口の支出を後回しにし、住宅ローンの頭金に資金を充てることを優先させる家庭は少なくない。

米中貿易摩擦の影響

また、アメリカと中国が相互に輸入品へ重い関税をかけ合う貿易戦争に突入してから1年を越えた。2019年1~9月の米中貿易額は前年同期比14.8%減少。アメリカは9月1日、対中追加関税措置の第4弾について一部を除き発動させ(12月15日に残りの品目を発動)、中国も報復措置を取った。さらに、1ドル7元を超える約10年ぶりの人民元安は中国政府が意図的に人民元安を容認した結果だと指摘し、アメリカ政府は中国を為替操作国に認定した。

今年10月11日の米中貿易交渉で、農産品などの分野で高関税をかけ合う措置を見送ると、第1段階の合意に至っており、米中の貿易摩擦がさらに深刻になる事態はひとまず回避された形となっている。世界経済の大きなリスクである米中対立の解消が見えにくくなっており、今後、米中の貿易交渉がさらに進展し、世界経済の減速への懸念が和らぐのかどうか注目される。

みずほ銀行(中国)有限公司は2019年6月に、中国で事業を展開する日本企業および中国地場企業に「米中貿易摩擦の影響」に関するアンケート調査を実施した。「悪い影響あり」と回答する企業が9.6%となり、「各社の今後の対応要」はほぼ半分を占めている(企業HPより)。同調査では日本企業が受ける直接的な影響が限定的であるものの、今後、米中貿易摩擦がもたらす間接的な影響が油断できないだろう。

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