埼玉「芝川」氾濫も大半の住宅が難を逃れた背景 台風19号の増水で見沼たんぼが果たした役割

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埼玉県東部を流れる芝川でも水があふれたが、住宅被害はゼロだった。芝川沿いの「見沼たんぼ」が果たした役割とは? 写真=国道463号バイパスから眺めた見沼田んぼ(筆者撮影)

71にも及ぶ河川で堤防が決壊し、関東地方を中心として住宅6万戸以上に浸水被害をもたらした台風19号(10月24日時点)。

水が引いた後の浦和中央自動車教習所(筆者撮影)

10月12日夜の通過前後には主に埼玉県東部を流れる「芝川」でも水があふれ、国道463号線(浦和越谷線)が冠水し、近くにある浦和中央自動車教習所なども浸水した。一方で、内閣府の防災情報ページで10月24日時点の発表を確認すると、芝川沿いの住宅被害はゼロだった。台風19号がもたらした大雨によって氾濫や堤防が決壊した各地の河川近くで多くの住宅が浸水した中で、難を逃れたのは偶然ではないだろう。というのも、さいたま市浸水(内水)防水マップにおいて、芝川沿いで浸水想定区域に当たる「見沼たんぼ」に住宅が建てられていないことが理由の1つとして挙げられるからだ。

大規模緑地空間となっている見沼たんぼ

芝川は、埼玉県桶川市を水源として、さいたま市の東部を流れ、川口市と足立区の境で荒川に注ぎ込む延長約29キロメートルの一級河川である。その芝川沿いに開けた低地が見沼たんぼだ。

(出所:見沼たんぼ見どころガイド2019)

見沼たんぼは東京から20~30km圏、さいたま新都心駅や大宮駅などの主要駅から2~3kmに位置し、面積は約1260ヘクタール(約12.6平方キロメートル)という広大な面積を持つ大規模緑地空間だ。

激しい雨が降ったときにはよく水浸しになり、芝川第一調節池などとともに、芝川からあふれた水を河川敷のように受け止める遊水池の役割を果たす。

今回の台風19号ではラグビー会場となった横浜国際総合競技場のある新横浜公園が鶴見川の遊水地として注目されたが、見沼たんぼの広さは新横浜公園の約18倍、東京都千代田区とほぼ同じ面積だ。

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