埼玉「芝川」氾濫も大半の住宅が難を逃れた背景 台風19号の増水で見沼たんぼが果たした役割

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台風19号上陸後に開催された財政制度等審議会の歳出改革部会では、治水事業の一環として「居住区域の規制強化」が提言された。地方自治体がコンパクトシティを目指して指定する「居住誘導区域」に、災害危険区域、土砂災害特別警戒区域、浸水想定区域が含まれているからだという。確かに行政がわざわざ災害リスクの高い区域に居住を誘導するのはおかしな話だ。

居住区域の規制強化と言っても、すでに市街化された地域に、見沼三原則のような規制を導入するのは困難だろう。ハザードマップなどを活用して、災害リスクの高い地域には国民がなるべく住まないように誘導するのが現実的な対策となる。

ハザードマップ情報提供の重要性

地方自治体では、水害発生時に避難が必要な地域などの住民にハザードマップを配布し避難場所の周知をする取り組みが進んでいる。不動産の売買契約や賃貸契約の重要事項説明のときに、土砂災害特別警戒区域などに加えて、ハザードマップの情報提供も義務付けるべきとの意見も出ている。

すでにハザードマップの整備率は洪水で98%(対象1331市町村)、内水で71%(対象484市町村)。パソコンやスマホで簡単に見られるようになっており、あとは居住者などにいかにわかりやすく情報提供するかである。

台風19号では、川崎・武蔵小杉のタワーマンション群が浸水被害を受けた。昔の地形図やハザードマップを見ると、十分に浸水被害が想定される区域であったが、はたして住民は認識していたのか。

過去のマンションや住宅地の記事を見ても、「駅から徒歩〇分」といった立地の利便性や「将来の価格上昇期待」などの資産性ばかりが強調され、災害リスク情報はほとんど書かれていないのが実情だ。メディアでも、積極的に災害リスク情報を発信する必要があるだろう。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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