『年功序列的生き方は可能か?』(21歳男性) 城繁幸の非エリートキャリア相談
<城繁幸氏の診断>
『レールの磐石な列車は人気も磐石』
年功序列制度、いい制度じゃないですか。私自身も嫌いじゃないですよ。よく誤解されるのですが、年功序列制度自体は良い面もたくさんあります。ただ、それがもはや維持できないのに維持しようとすると、いろいろな矛盾が出てくるわけです。
余談ですが、外資系金融機関に勤務する知人の話なんかを聞くたび、正直「いやあ、ちょっと自分じゃついていけないなぁ」と実感します。労働自体が過酷というのもありますが、基本的にカルチャーが日本企業とは違いますから。
たとえば、ある外資系投資銀行は採用面接で「君が他人を打ち負かした経験を教えてください」なんて質問を平気でするわけです。普通の日本企業じゃまず聞かないし、嬉々として答える人間がいたら逆に引いちゃいますよ。それくらい風土が違う世界です。
さて、質問への回答ですが、ご指摘のとおり、業種によってはいまだ根強く年功序列制度が残っています。どういう業界かというと、以下のような条件にマッチするところです。
(1)グローバル化の影響をほとんど受けない
(2)規制で手厚く保護されている
(3)技術革新より、技術蓄積の方が重要
たとえば家電メーカーなんて、これの対極と言ってもいいでしょう。部品の半分以上は中国・台湾製で、アジアの新興メーカーとの過酷な価格競争にさらされ、他産業よりずっと低い利益率でやっていかざるをえないわけです。もちろん、輸出産業でもありますから、政府も規制なんかで保護はしてくれません。当然、人事制度も製造業ではもっとも成果型へシフトしています(現状はまだまだ課題も多いですが)。
じゃあ具体的な年功序列的業種はどこか。代表例はメディアでしょう。
たとえば新聞。ある日突然、海の向こうから新聞が輸出されてくるわけでもありませんし、「記事書いて、広告載せる」というビジネスモデルは100年近く変わっていません。しかも、ホリエモンみたいな新興勢力が買収しようとすると、一致団結してバッシングキャンペーンまでやってくれるわけです。出版社もそうですね。グローバル化はほとんど関係なく、いろいろな規制で守られています。
結果的に、彼らの人事制度は“ものすごく古い”ですし、それで特に不満は出てきません。年功序列のレールが崩れているわけではなく、ちゃんと昇給や出世もさせてもらえるからです。彼らについては、少なくとも現状は変わる必要なんてないんですね。