脳機能の低下を防ぐには「手書き」が有効だ 「あれなんだっけ」が増えていませんか?

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脳科学の世界では、人の脳細胞の数は加齢によって減ることはあっても、回復することはないと長年にわたり考えられてきました。

高齢期になって「もの忘れ」が起こるのは、仕方がないことだと考えられていたのです。

しかし現在では、脳には神経幹細胞といういつでも分裂できる細胞があり、それにより人の脳内では新しい神経細胞が誕生することがわかっています。加齢による「もの忘れ」を予防するためには、脳にさまざまな刺激を与えることが重要だということが認知されてきています。

人の脳は何歳からでも、脳を刺激し、脳細胞を増やすことで、パフォーマンスを向上させることができます。

「昨日と同じ毎日」「何も楽しみがない」という日々を送っていると、脳は新しい記憶を保存することをやめてしまいます。だからといって、旅行に行ったり、新しい習いごとを始めなさいと言いたいわけではありません。確かにそれらは脳に刺激を与えるという点で大事なことですが、ここで伝えたいことは1つ。年齢を理由に「今さら手遅れだ」と悲観する必要はまったくないということです。

「もの忘れ」は記憶の引き出し機能の衰え

ここで記憶について少し説明しましょう。

「あれあれ」が起こるのは「記憶」をつかさどる脳に原因があります。一口に記憶といっても、記憶は3つの工程から成り立っています。

その1 物事を覚える
その2 記憶を脳に保存する
その3 思い出す

記憶するといっても脳の中では、この3つの工程を繰り返しています。何かを見たり聞いたり味わったり、私たちの目や耳、鼻、口、皮膚などの感覚器で捉えた情報は脳に送られ、脳に保存されます。脳に送られた情報は、ほかの記憶とひも付けられたりすることで脳の保管庫に記憶としてしまわれます。

その後、人が経験を重ねる中で必要に応じて、保存された中から必要な情報を引き出します。脳の中の記録から必要な情報を引き出せたときに初めて、人は、「覚えている」「思い出せる」と実感できるというわけです。

この3つの工程のうちのいずれかで処理がうまくいかないと思い出すことができず、私たちは「あれあれ症候群」に陥ってしまうということになるのです。

脳に記憶が保存されていても、必要なときに思い出し活用できないのであれば、記憶していることにはなりません。けれど、記憶はなくなっているわけではなく、必要なときに記憶をスムーズに引き出せないことが問題だというわけです。

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