貧しくても「読む力」があれば世界は変わる

ブレイディみかこ×新井紀子「教育」を語る

新井:関税がかかるようになれば、大変なことになるのは目に見えていますから、彼らがもう少し計算高く読解力があればとも思いますが、一方で、戦争とか大災害というようなことがない限り、格差は縮まらないという調査もありますね。

ですから、イギリスがそういう選択をしたことの背景には、「やけくそ」みたいなことがあったのかもしれません。日本でもいっとき、赤木智弘さんの「『丸山真男』をひっぱたきたい」が、若い世代の支持を受けました。

ブレイディ:「希望は、戦争」ですね。イギリスではやけくそになったのは中高年でしたけど。

イギリスの幼児教育カリキュラムは0歳児から

ブレイディ:ご著書に、日本は受動的な教育のイメージがあるけれど、実はアクティブラーニングの先進国なんだということが書いてあって驚きました。

『THIS IS JAPAN』という本を書いたときに、東京都の保育園を回ったんですが、あまりに画一的で驚きました。例えば3歳児なら、イギリスでは1人の保育士が8人の子どもをみますが、日本では1対20で、4歳児でもイギリスは同じ1対8なのに日本は1対30。そうなってくると、みんなに同じことをさせなければやっていけませんから、子どもからすると受動的になっちゃいます。教育というより、事故がなければいいみたいな、羊飼い的なやり方になってしまうんです。

せっかく世界に先駆けて小学校でアクティブラーニングを取り入れているんだったら、そういうことができる素地を、幼児教育の段階でできるようにしていたらいいのにと思いました。

新井:保育園を厚生労働省が管轄しているところに問題があります。

ブレイディ:そうですね。

新井:保育園は保育サービスが仕事だから、それさえしていればいいという、縦割り行政の弊害です。そういう問題はありますが、私は、生まれた年から全員保育園がいいと思っています。

ブレイディ:私も、そう思いました。

新井:全員保育園にすれば、少なくともご飯は食べられるし、虐待も早期発見できる可能性が高いし、格差の解消にもなるし、一人っ子だったら保育園でたくさんの子どもと一緒にいたほうが語彙も増えるし、いいことばかりです。

でも、日本の30人という基準は問題ですね。制度設計された1960年代頃の日本は、高度成長に向かう時期で、今よりは格差もなくて、ある意味で社会主義的な世界だったのだと思います。同質の子どもが多かったので、30人でも現場は回ったんです。

でも、「失われた20年」の間に格差が広がって、とてもそれでは回らなくなっているのに、財政が逼迫していて加配できない。そういう状況だと思います。

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