貧しくても「読む力」があれば世界は変わる ブレイディみかこ×新井紀子「教育」を語る

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新井:1問しか間違えなかったというのはすごいんですよ。某有名雑誌の編集長は、具体例同定の理数問題は零点だったと言ってました。

ブレイディ:そうなんですか。

新井:ええ。だから、ブレイディさんは読めてるんです。

読解力と偏差値は相関する

ブレイディ:私は一般に進学校と呼ばれる高校の出身ですけど、塾にも行ったことがなくて、勉強も全然していませんでしたよ。

新井紀子(あらいのりこ):数学者。国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長。一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院を経て、東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。主著に『数学は言葉』(東京図書)、『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)、『ロボットは東大に入れるか』(新曜社)、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)などがある(撮影:尾形文繁)

新井:だから、読めたから入れたんですよ。読解力と偏差値は相関するんです。

ブレイディ:だから、別に塾に行けなくたって、読む力さえ身に付ければなんとかなる。そういう子どもがこれからたくさん出てくれば、日本だけじゃなくて、世界が変わるなと思いました。

新井:ところで、なぜ、イギリスの人たちがブレグジット(イギリスのEU離脱)を選択したのかを聞き取りされたブレイディさんの調査の手法は、統計学的に正しい方法です。それで、よくわかったんですけど、つまり、「俺たちに票をくれるんだったら、それはやるぜ」ということですよね。

ブレイディ:そこがロックなんですよ。いい悪いは別にして、とりあえずやっちゃうロックが出てしまって。

新井:どうせ今最低なんだから、これより悪くはならないんだから、みんなが最低になったらかえって平等になっていい、というようなことを言ってますね。

ブレイディ:やけくそとも言うんですけれどね。

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