子ども部屋おじさんと揶揄する人に欠けた視点 個人的な感情は抜いて客観的な視点が重要だ

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それによると、確かに、一人暮らし未婚のほうが親元未婚と比べると所得は全体的に上回っています。が、その差分は、男性で年間67万円、女性でも69万円で、月当りにすれば6万円弱の差にすぎません。むしろ、6万円程度の差にもかかわらず、その中から家賃・水道光熱費・日々の食費など必要経費を賄わなければならない一人暮らし未婚のほうが、財布状況は苦しいと言えるかもしれません。

親元未婚は、月6万円所得が少なくても実家にいる分、コストが削減されます。一人暮らし未婚が外食によって日々の食事に対応せざるをえないことに対して、その分の食費も浮きます。浮いたコストは、そのまま自分の趣味や関心領域に思う存分使えるということです。言うなれば、賢い生き方をしていると言えるでしょう。

親も苦しい

ちなみに、2018年家計調査から35~59歳単身世帯における家賃・水道光熱費・外食を除く食費の月間平均費用は男女とも約7万円程度です。つまり、一人暮らし未婚の6万円分多い所得は、必要経費を支払ったら、親元未婚に対して逆に1万円の赤字であるということになります。

一方で親も苦しいのです。全国大学生活協同組合連合会による「第54回学生生活実態調査の概要報告」によれば、学生に対する親の仕送り額は、2018年で平均7万1500円です。2003年頃までは、月10万円以上の仕送りをする親の比率が過半数を超えていましたが、最近は3割を切っています。

未婚化の問題を「若者の草食化」などとする考え方同様、親元未婚に対して「社会の落伍者」であるかのようなレッテル貼りは正しくありません。

ましてや、「おじさん」という属性なら安心してたたいていいという風潮は、正しい事実をねじ曲げ、未婚化や少子化の本質的部分を曖昧にする危険性があると考えます。それでは、「見たいものしか見ない」というより「見てもいないものを見たと信じてしまう」ようなものです。個人的な不快感や怒りの感情に支配されて、不都合な真実を透明化してはいけないと思います。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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