ついに自衛隊を中東派遣「苦渋の決断」の危険性 一触即発の事態に巻き込まれる可能性も

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これを機に、ホルムズ海峡周辺などの中東地域では、アメリカとイランの対立に関連したとみられる不穏な動きが相次ぐことになる。5月には、ホルムズ海峡に近いアラブ首長国連邦(UAE)沖で、サウジアラビア船籍のタンカーなど4隻が攻撃を受けたほか、6月にもホルムズ海峡に近い海域で日本の海運会社が所有するタンカーを含む2隻が吸着式地雷を使ったとみられる攻撃を受けて炎上。

9月にはサウジの石油関連施設2カ所が攻撃を受け、一時的にサウジの原油生産量が半減したほか、10月に入って前述のようにイランのタンカーが攻撃されたとする事件が起きるなど緊張の舞台は紅海にも本格的に拡大した。

イランが始めた「危険なゲーム」

特徴的なのは、いずれの事件も「攻撃主体」が明確になっていないことである。部隊を中東に相次いで増派してイランへの軍事圧力を強めるアメリカに対し、イランは、ゲリラ戦術や代理人の使用、攻撃の否認性といった非対称戦争で挑んでいるようだ。

イスラム教シーア派の大国イランは、思想的に近いイエメンのシーア派系フーシ派を支援し、対立するサウジへの圧力を強めているほか、タンカー攻撃にフーシ派などの代理人を使っている疑いがある。

原油輸出が国庫収入の大半を占めてきたイランは、アメリカの締め付けで原油輸出が2018年のピーク時の約20分の1の水準にまで低下しており、経済的に窮地に陥っている。このため、イランは、軍隊による正面対決は避けながらも、傀儡(かいらい)勢力を使うなどしてホルムズ海峡封鎖の可能性を示したり、サウジの原油輸出に大きな打撃を与えて原油相場を人質に取れる能力を示したりすることで、アメリカや国際社会の譲歩を引き出そうと試みている。

イスラム研究で名高いイギリス・ダーラム大のイラン研究者ジェイコブ・シィタ氏は「イランは危険なゲームを演じている」と述べ、一連の事件の背後にイランが存在すると分析している。

だが、確定的な情報がない中、イランとの戦争を望むとされるアメリカの一部勢力やイスラエルによる陰謀論もささやかれている。

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