ついに自衛隊を中東派遣「苦渋の決断」の危険性

一触即発の事態に巻き込まれる可能性も

7月にはシリア向けの原油を積んでいたとされるイランのタンカーが、大西洋から地中海への入り口のイギリス領ジブラルタル沖で拿捕(だほ)されており、イランにとって、紅海のシリアに向けた原油輸送の航路の重要性が増している。

イランとイスラエルの軍事的な衝突は、シリア内戦を機にイランが足場を築いたことで激化。イスラエル政府は8月、イランがイスラエル領内へのドローンによる自爆攻撃を計画していたとして、シリア領内のイラン関連施設を先制攻撃した。イラン・タンカーへの攻撃は、イランとイスラエルの対立が紅海にも実際に広がってきた証しと考えても不自然ではない状況だ。

イスラエルは、核兵器開発疑惑を理由にイランを直接的にたたきたいが、自ら手を下さないでイランの弱体化につながるアメリカやサウジとイランの戦争を誘発する攻撃を仕組む動機があるとの見方もある。ある中東専門家は「多くの利害関係者に動機があり、一連の事件の犯行主体を断定するのは困難だ」と事態の複雑さに頭を悩ませている。

日米安保絡み軍事貢献やむなしか

核問題をめぐる中東の危機は、トランプ大統領が一方的に合意から離脱したことに端を発している。だが、歴史をさかのぼれば、イランとアメリカやイスラエルとの対立関係は、アメリカのイランに対する工作や、イランの国内事情が要因の1つになっている。

1979年にイラン革命を成功させたホメイニ師ら指導者は、シーア派国家建設に際して、「アメリカに死を、イスラエルに死を」をスローガンとした。イスラエルにあるテルアビブ大学のイラン研究者ドロン・イツハコフ博士は論考で、「ホメイニ師はイスラエルに対する憎悪を、政権を強化するために使える『道具』と見なした。そして、イランの体制にとって、こうした憎悪が中核に位置付けられ、イランのアイデンティティーを形成することになった」と解説する。

日本の自衛隊中東派遣という苦渋の決断も、日米関係における政治事情が深く関係していることは言うまでもない。トランプ大統領が責任の不公平さを理由に日米安全保障条約を破棄する可能性を示したと6月に報じられ、在日アメリカ軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の増額という話も浮上した。

こうしたタイミングで日本のタンカーが多数航行する中東の原油輸送の大動脈が脅かされ、日本政府内では、何らかの形で自衛隊を中東に派遣する軍事的な貢献は避けられないとの雰囲気が広がっていた。イランとアメリカの双方の顔を立てなければならず、イランを刺激しない海域への派遣は外交的にはやむをえない選択だったと言えよう。

だが、両国を中心とした緊張状態はホルムズ海峡にとどまらない。日本政府が派遣を検討するイエメン沖やバベルマンデブ海峡周辺にも広がっているのは前述した通りだ。日本は、国家のみならず武装勢力の思惑が渦巻く複雑な中東政治に巻き込まれる事態も想定しておくべきだろう。それは中東の石油に大きく依存する代償でもある。

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