ルポ武蔵小杉、憧れの街を襲った水害の爪痕 不便な状況続き、全面復旧はまだ先か

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街では、テレビ局の取材記者の姿もちらほらと見えた。浸水した場所や、マンションの中の様子を取り上げに来たという。

「あるタワーマンションがまだ浸水している」という話を聞きつけて、そこへ足を運んでみた。ロビーには「一部のウェブメディア等で、当マンションで被害があったという報道がありますが、施設設備に被害はありません」という告示があった。ネット上では真偽不明、出所不明のさまざまな情報が出回っており、風評被害が広がっていることをうかがわせた。

街の大部分では、普段通りの風景を取り戻してはいるものの、台風の爪痕は一部で残る。川崎市上下水道局によると、近年はゲリラ豪雨などが多く水量が増えていることから、下水処理能力の強化は課題として認識しているという。

武蔵小杉だけではない、河川沿いの浸水対策に国は?

今回、首都圏の一例として武蔵小杉を取り上げたが、多摩川の氾濫が起きた二子玉川や田園調布でも、浸水や停電などの想定外の被害があった。また、今回は難を逃れたが、東京の東部を通る荒川で堤防決壊や氾濫が起きれば、下流域への影響は計り知れない。

国土交通省の京浜河川事務所は今後の対策について、「豪雨に備えて水位を下げるには、河川幅を広げなければならない。しかし多摩川は両岸に住宅などもあり工事は難しい。自治体や管理者と協力し、設備メンテナンス強化に努めていく」と述べている。

住む街を選ぶ段階では、予想できないことももちろんある。しかし、どの街に住んでいても起きうる可能性があることだ。あらかじめハザードマップを確認したり、何かが起きたときのための備えや議論をしておいたりすることの重要性を、今回再確認した。この台風を教訓として、誰もが防災について再考する必要があるだろう。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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