ルポ武蔵小杉、憧れの街を襲った水害の爪痕

不便な状況続き、全面復旧はまだ先か

しかし台風19号によって、武蔵小杉は思わぬ被害を受けた。駅前では排水管からの逆流で浸水が起き、JR武蔵小杉駅では改札が冠水して水没したり、駅ビルが浸水したりしたほか、一部のタワーマンションではエントランスから水が流れ込み、地下の電源系統を直撃、停電が起きたところもある。住みたい街のイメージとは一転、混乱状況に陥った。

武蔵小杉は、2016年に公開された映画『シン・ゴジラ』で、奇しくもゴジラが首都圏に上陸する舞台として描かれていた。映画では、ゴジラが多摩川をさかのぼり、丸子橋を破壊したが、先の台風でそのシーンを思い浮かべた人も少なくないはずだ。

今回の台風では、多摩川が増水し、街を走る排水管を逆流していったことで、激しい浸水が起きた。多摩川の氾濫には至らなかったが、降水量増加で排水能力がキャパオーバーとなったことが原因だった。

多摩川の氾濫時、武蔵小杉駅周辺は浸水が最大4時間にも及ぶ可能性がある(写真:川崎市洪水ハザードマップ)

川崎市によると、このあたりの地域では雨水と汚水を同じ下水管で流し、川へ放流する「合流式」の下水システムが敷いてある。合流式は、都内23区の多くで採用されているものと同じだ。街中には逆流した土砂が一部残っているうえに、汚水に含まれていた病原菌が乾いて空中に飛散することによる、衛生上の問題も懸念される。

川崎市が公開している浸水予想区域図(ハザードマップ)を見てみると、武蔵小杉駅周辺、特にタワーマンションが立ち並ぶ横須賀線口周辺では、多摩川の氾濫時、浸水継続時間が4週間にも及ぶ可能性があり、水はけが悪い場所であることが示されている。

道には土埃が残り、いまだに停電が続くタワマンも

武蔵小杉の駅前を歩いてみた。水はほとんどひいているが、泥や砂のあとが道路や建物に茶色く残っている。駅前のロータリーでは、街路樹が倒れたままになっていた。汚水の臭いはしないが、時折舞う土埃の臭いが気になる。

駅前の施設は、通常営業に戻っているところがほとんどだが、ある駅前の高層ビルの1階に入っているコンビニエンスストアは営業を休止していた。清掃作業をしていたオーナーは「ビルのメイン電源が落ちていて、電気は発電機でまかなっている。50㎝くらい浸水したので店内の消毒をしないといけないし、手を洗う水が出ず食品を扱えないため、営業再開のメドはまだ立っていない」と話した。ビルができてから10年近く営業しているが、こんなことは初めてだと驚く。

駅前のコンビニエンスストアは、浸水被害で営業を取りやめていた(写真:東洋経済オンライン編集部)

同じビルに入っているマンションのエントランスロビーには水や食料、生活用品など大量の備蓄品が並べてあった。ホワイトボードには、エントランスから大量の水が流れ込んだため、電源系統が落ちてしまったことなど、被害の状況が記載されていた。

「管理組合の意向で取材は受けられない」ということだったが、話を聞けた住民によると「一部復旧しているところもあるがまだ停電していて、トイレは共用部を使っている」という。給水は18日、電気は20日をメドに復旧するそうだ。

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