ベトナム産コーヒーをブランドに変える仕掛人 東京の有名店や大手通販が続々と取引を拡大
「コーヒーの街」と称される清澄白河にある有名コーヒー店オーナーもトイ・グエンさんのコーヒーに魅せられた1人だ。「アライズ コーヒー ロースターズ」の代表で焙煎士の林大樹さんは、他店から「ロブスタ種なのにすごいコーヒーがある」と聞き、7月に黒田代表を通じて確かめ、3種類を30キログラムずつ購入。その翌週には同コーヒーのストレートのドリンクと豆の販売を開始した。
「ほかの豆と明らかに違う。従来のスペシャルティコーヒーしか知らない世代にも訴えうるすばらしい個性。プロからも好評で、扱ってよかったと思う」と、林さんは新たな商品としての自信を見せる。
同店は独自のルートで仕入れたタイ、ラオス、フィリピンなどアジア産コーヒーに注力しているが、そのバリエーションを増やすのにもうってつけだという。今後は準定番として定着させたいと意気込む。
さらに、大手通販会社フェリシモでもトイ・グエンさんのコーヒーの商品化を決めた。同社は福祉作業所などの参加を軸に開発する商品プロジェクトで、農園や製造工程にこだわった豆を販売する「ビッグスマイルコーヒー」を展開中だ。
黒田代表の貧しい農園支援や、福祉事業所との協働に賛同し、2020年4月のカタログとウェブから「フューチャーコーヒーファーム」の3種のコーヒーの飲み比べができる少量ドリップコーヒーのセットや、100グラムと200グラムのコーヒーを販売予定だ。
同社生活雑貨事業部 CCP推進グループの永冨恭子氏は「思ったよりもおいしく、スイーツともアレンジができる」と、商品の可能性に思いをはせる。新たな煎れ方などを伝えるワークショップの開催も現在企画中で、「今後も一緒に広げていきたい」と語る。今年11月には黒田代表とフューチャーコーヒーファームで農園の手伝いをし、ウェブやカタログで収穫の様子を発信する予定だ。
黒田代表が今年4月に仕入れたコーヒーは2.5トン。ほかにも道の駅など、取引先が次々と決まり、すでに2トンを販売。次回は2020年3月頃に5トン程度を輸入する予定だ。中国で紹介することも検討中だという。
丸紅が即席コーヒーの世界トップへ
一方、ベトナム産インスタントコーヒーの世界戦略を進めるのが大手商社、丸紅だ。同社はバリアブンタウ省に100%出資のインスタントコーヒー製造販売会社、イグアスベトナムを設立。2022年にASEAN、中国向けを軸に供給開始を目指す。稼働開始当初は年産1万6000トンを見込む。
すでにブラジルで50年弱の実績を積み上げる同社はノウハウと販売力を生かし、ベトナムから世界へと新たな展開に意気込む。2020年に生産能力を拡張する同社のイグアスブラジルと合わせると年産4万トンになり、丸紅はB to B(企業向け)のインスタントコーヒー市場で世界最大の製造販売会社となる計画だ。さらに焙煎や乾燥、抽出のノウハウを活用して、長期的には緑茶や麦茶などお茶類の横展開の青写真も描く。
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