ベトナム産コーヒーをブランドに変える仕掛人

東京の有名店や大手通販が続々と取引を拡大

除草剤を使わず、甘味と風味を作るために微生物肥料を使うこと、発酵量、発酵温度、熟成槽のpH値など、インターネットですべての資料を読みあさった。精製方法とカッピングの講習も受け、豆を専門家に送り、評価依頼や問題点の改善点の教えを請うた。

豆はさらに上品な風味と香り、軽い酸味、苦味、甘味、奥深さ、後を引く味わいにする必要があった。冷蔵室で嫌気性発酵に関する資料を読み、イナックス製のビール樽とワインを醸成するための専用の発酵用具と小さな冷蔵室の設備に投資した。冷蔵室で発酵技術を駆使しながら、実験を行い、トイ・グエンさんが精製したロブスタ種にとって、この発酵方法が最適だと発見する。

こうして生み出されたトイ・グエンさんのコーヒーは、黒田代表が輸入している日本をはじめ、アメリカ、ベルギー、カナダ、台湾、韓国にも大口顧客が広がる。今後はコーヒー精製時の水処理の問題などを解消できれば、「ほかの地域でもおいしいコーヒーを作ることができる。バオロクをよりきれいな水のコーヒー産地として村おこしをしたい」(黒田代表)と夢を膨らます。

トイ・グエンさんは他農園にもノウハウを提供し、将来のベトナムコーヒーを変革しようとしている。

導入先の1つ、東京・西東京市田無の「だいちcafe」は西武新宿線田無駅からほど近い閑静な住宅地にある。同店を経営するT・Iファーマシーの松本大智さんは「豆も味もよかった。日本ではなじみが薄く、安い豆の部類であったロブスタ種だが、ストレートで飲めておいしい。郊外の住宅地でこだわったコーヒーを置くのも面白いのではないか」と、導入の決め手を語る。客の評判も上々だという。

日本人も「固定観念をくつがえす魅力」に賛同

実際、記者が飲んでみると、大変飲みやすく、飲み進むにつれ花のような香りが広がる。

飲み進むにつれ花のような香りが広がる(記者撮影)

時間が経つとコクが増していく。ミルクを入れるとコーヒーの味が際立ち、相性がよい。「最初に苦味がきて最後に華やかなフルーティーな感じがワイニー製法というトイ・グエンさんのオリジナル製法による味の特徴。赤ワインのような香りとよく言われる」と松本さんは話す。

熟成コーヒーチェリーを、時間をかけて乾燥させる高度なワイニー製法は中米のアラビカ種にはあるが、ロブスタ種では初めてではないかという。さらにトイ・グエンさんの製法では天日や温度に独特の手法を施す。「豆によっては麻袋30キログラム中、1~2割は欠陥豆があるものだが、彼の豆はほぼ欠陥豆がなく、品質が安定している」(松本さん)。

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