ベトナム産コーヒーをブランドに変える仕掛人 東京の有名店や大手通販が続々と取引を拡大
つまり、ベトナム産コーヒーは輸入「量」ではブラジルに次ぐメジャーな地位にあるものの、「品質=ブランド力」ではマイナー商品から抜け切れなかった。それはなぜか――。
内藤専務理事は「ベトナム産の約95%を占めるロブスタ種は可溶性固形分が多く、豆が少量でも抽出しやすい。このため主な用途として、他国産とブレンドするインスタントコーヒーや缶コーヒーなどに使われてきたから」と話す。
また、ロブスタ種は日本人の好みに合わなかった面もある。日本人に人気のコーヒー豆はモカやブルーマウンテン、キリマンジャロといったアラビカ種が中心で、すっきりとした酸味が好まれる。一方のロブスタ種は苦みが強く、ストレートで飲まれることは少なかった。名脇役だが、決して主役にはなれなかったベトナム産コーヒー。
それを、「赤ワインのようなフルーティーな香り」に仕上げた“魔法使い”がいる。ベトナム人のコーヒー農園Future Coffee Farm(フューチャーコーヒーファーム)オーナーのトイ・グエンさんだ。
ベトナム産コーヒーの概念を覆す「超ハイレベル品質」
ベトナム産コーヒーを一新したトイ・グエンさんのサクセスストーリーに入る前に、彼のコーヒーを日本に紹介した人がいる。兵庫県宝塚市でコーヒーショップやコーヒー豆・焙煎機などの販売を手がける、「8(ハチ)コーヒーロースト」の黒田吉範代表だ。
黒田代表はベトナムで2年にわたりコーヒー農家を歩き回り、ベトナムでカフェを100店以上展開するザ・コーヒーハウスの紹介で、トイ・グエンさんの高品質ロブスタ種に出会う。今年4月からフューチャーコーヒーファームの日本総代理店として輸入販売を始めた。
「通常のアラビカ種にはない良質なロブの香り、コクがある透きとおった味わい」と黒田代表は最初の出会いを話す。「大手企業のQグレーダー資格者(アメリカのコーヒー品質協会であるCQIが認定したコーヒーの評価を行う技能者)や生豆調達担当者がコーヒー豆を見せてほしいと当社にアプローチしてきた。高品質なロブスタ種を実際に見るのは初めてだったと思う」と黒田代表。
いわば、コーヒーのプロでさえ味わったことのなかった、スペシャルティコーヒー(高価格帯で生産管理されたコーヒー)。
その味は従来のベトナム産コーヒーの概念を大きく覆すものだった。
SCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)は、スペシャルティコーヒーの基準をCQIの評価で80点以上と定め、「Qグレードコーヒー」として認定しているが、トイ・グエンさん農園の「ワイニー・ハニー」はベトナム初の85点、「ワイニー・ナチュラル」もベトナム初の84.25点と、ロブスタ種として異例の高得点で認定された。
黒田代表によると、85点を取得したのは世界のアラビカ種全体でさえ5%程度しかないという超ハイレベルだ。
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