東横線とは違う「東急多摩川線」の隠れた実力 路面電車のように乗れ、使い勝手が良い
「いや~、何もないですねえ。本当にのどかな、普通の住宅地ですよね。乗降客数もあまり変化していないと思うんですけど、まあほかは……。あ、池上線の御嶽山駅まで歩くこともできますね」(山口駅長)
と、なんだか悩ましげではあるが、よくよく聞いてみると“桜坂”が沼部の名所のひとつだとか。
桜坂とは、あの福山雅治の大ヒット曲『桜坂』の舞台となった場所のことであり、春先に桜が咲き乱れればそれはそれはきれいなのだとか。取材で訪れたのは春先どころか秋口だったので緑に覆われていて“桜坂”といった雰囲気はほとんどなかったが、春はたくさんの人でにぎわうのだろう。
続いては鵜の木駅。ここにはかつて、安楽座という古い映画館があったという。最後まで古い映写機を使っている映画館で、ここの社長がよく駅に遊びに来ていたそうだ。駅前に映画館があるというとにぎやかな商店街を想像するが、たしかにそのとおり、改札口を出るとすぐに地元の商店が軒を連ねる町へ出た。
全国にある「鵜の木」
「毎年鵜の木では『全国鵜の木まつり』というイベントをやっています。国内には鵜の木という地名がいくつもあるらしくて、その町がいろんな特産品を持って集まってきてお祭りをやる。鵜の木は秋田に多く、だからナマハゲが来ていろいろやっていますね」(山口駅長)
この全国鵜の木まつり、なんと今年で31回目。つまりは1989年(平成元年)から続けられている伝統的なお祭りである。さらに揚げパンの発祥地でもあるなど、掘ればいろいろ出てくる鵜の木の町である。
「鵜の木まつりのときは人がたくさん来ますからね、鉄道を運行する立場では踏切がちょっと怖いんですよね」(山口駅長)
ここまでは、山口駅長も高塚駅長も頭をかきながら各駅の特徴を“ひねり出して”いたが、次の下丸子駅は違う。ふたりとも、すぐに「キヤノンですね」と教えてくれた。下丸子駅はキヤノン本社の最寄り駅。さらに白洋舎の本社やANAの研修センターがあるなど、これまでの“下町感”とは打って変わって“企業の町”なのだ。
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