東横線とは違う「東急多摩川線」の隠れた実力 路面電車のように乗れ、使い勝手が良い

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そして矢口渡駅を出ると、電車は北からやってくる池上線の線路と合流して駅ビルの中に突っ込むように終点の蒲田駅。高塚駅長は「かつての東横線渋谷駅を彷彿とさせる、最後のターミナルの雰囲気を持っていますよね」と話す。

蒲田駅にはかつての東横線渋谷駅を彷彿とさせる“古き良きターミナル”の面影が残る(筆者撮影)

「蒲田は工場の町でしたから。工場だと三交代制で働く人も多い。だから、朝から飲めるようなお店も多いんですよ。鉄道の仕事も朝終わったりしますから……仕事の後に行く人もいます。東急の高架下には知る人ぞ知る飲み屋さんもあるらしいです」(高塚駅長)

と、最初は「多摩川線には特になにもないですよ」と言っていたふたりの駅長も、気がつけば沿線の魅力をたっぷりと教えてくれた。

「なにもない」と言いつつも、多摩川線沿線ならではの下町感あふれる魅力。山口駅長と高塚駅長は「変わらないですよね、多摩川線は。地元との付き合いの濃さもそうですし。もちろん人口も増えているんですけど、変わらないところは変わらない」と口をそろえる。

東急の路線で一番古い

もともと、東急電鉄にとって多摩川線はルーツと呼べる路線だ。1923年3月に目黒―丸子(現・沼部)間で開業し、同年中に蒲田まで延伸。現在の東急の路線の中で最も古い。現在は目黒線となっている目黒―多摩川間は田園調布に代表される“東急の沿線開発”の舞台となったが、古くから池上本門寺、新田神社、さらには川崎大師への参詣ルートにもなっていた多摩川―蒲田間は昔からの町も多く、それが今にも残っているということだろう。

さらに、“相互直通運転”全盛の今、改めて多摩川線のような路線の強みもあるという。それは、“直通運転がないがゆえに列車の遅れが少ない”ことと、“逃げ場が多い”ことだとか。

「今年4月から9月半ばまでの平日で4分以上遅れたのは4日だけ。混雑が原因の遅れは1日もありません。さらに、京浜東北線や当社の東横線・目黒線などどれかのダイヤが乱れたときにもいつもと反対側に出たら影響を受けずに都心まで出られます。そういう“逃げるルート“の多さも多摩川線の特徴では」(山口駅長)

例えばいつも蒲田駅で乗り換えて丸の内方面に通勤しているとすると、京浜東北線が止まっても多摩川駅から目黒線に乗り換えて直通する都営三田線を使えば、ダイヤ乱れの影響を最小限にとどめて会社まで行くことができる。

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