独裁者たちが「デザイン」にこだわった理由 ヒトラーやムッソリーニ、毛沢東の手法とは

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──ヘイトポスターは権力者の意図が明確ですが、ひそかな洗脳にはどう対抗すべきでしょう。

デザインは中立的ですが、皆に同じことを言わせ、同じことをさせる同調圧力を強化するために過剰に利用されます。そうした裏のはかりごとを見抜く力、一種の教養がないと簡単にデザインに取り込まれてしまう。昔から権力者は焚書をやってきて、本書の4人も例外ではありません。ヒトラーは政権を奪取した4カ月後に大焚書を実施、毛沢東は民衆には『語録』さえあればいいという態度。これは裏返すと、知識が反乱の芽を育むことを知っていたからです。

尊敬する、歴史探偵の先達、半藤一利さんは、戦争で一番の問題は熱狂、という主旨のことを言っています。熱狂したら教養も何もなくなりますからね。だから、独裁者は同じ言葉を連呼したり、ヘイトポスターを連貼りしたりして熱狂をつくろうとしたわけです。

現在はデザインよりSNS

──現在の世界の独裁者はデザインの利用に熱心に見えません。

インターネットが発達して、デザインを使ってビジュアルで見せるよりも、SNS(交流サイト)を使って言葉で発信したほうが、直接的に個々人に届いて効果的だということがわかってしまった。

『独裁者のデザイン ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

もはやヘイトポスターが貼れる時代ではなく、デザインが社会を洗脳する力は格段に低くなった。毒になるデザインが活躍できなくなったのはいいことなのですが、単にSNSに取って代わられただけなら、デザイナーとして正直悲しい。図らずも、毒のあるデザインへのレクイエムを書いた形になりました。

──毒が消えたわけではない。

言葉の時代になっても、本質を見抜く力がなければ、熱狂させられてしまう。しかもネット上の言葉は削除も修正も改ざんも可能。権力者にとって都合がいい。そう考えると、現代においても権力者が恐れるのは簡単に修正できない紙の本。私たちは再び焚書を目にすることになるかもしれませんね。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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