ファーウェイが「代理戦争」する米国企業の存在 米中ハイテク利権の知られざる暗闘

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2018年度だけでもフレックスはファーウェイと約25億ドル(約2700億円)の取引があり、同社の総売上高の約10%を占めている。ファーウェイは同社にとって最大の顧客だ。フレックスがファーウェイのサプライチェーンから排除されるというニュースが流れた後、同社の株価は連日大きく下落した。

今後、フレックスがファーウェイという大きな顧客を完全に失う可能性が高い。ファーウェイとの提携が終わったため、本来ファーウェイのスマホ製造のために設立されたフレックスの長沙工場も操業を停止している。中国の経済メディア『財新』の報道によると、「2019年3月から、フレックスの長沙工場の第1期プロジェクトの生産が頓挫し、5月には同工場での生産が停止した」という。

公開資料によると、フレックスの長沙工場の総面積は620ムー(約41ヘクタール)で、主に生産されているのは、スマホ端末とAI電子商品で、50億元(約750億円)が投じられた。

フレックスは長沙工場から撤退する意思があり、中でも第2期プロジェクトはすでに中国の電気自動車メーカー最大手の比亜迪(BYD)に引き継がれている。その後もここではファーウェイのスマホのOEM生産業務が行われ続けるという。

ファーウェイにとって、フレックスが持つOEM生産能力は決して不可欠ではない。最近の現地報道によれば、これまでフレックスに注文していた業務は、すべて台湾のフォックスコン(富士康)が引き受けることになったという。

リストラに工場職員が猛抗議

フレックスはさらに自社工場の職員をなだめなければならない。8月3日、同社がファーウェイ事業の部門でリストラを開始していることが多数のメディアに取り上げられた。これは同社がファーウェイのサプライチェーンから除外された後に取った善後策だ。

フレックスは職員の配置に関する問題はすでに解決していると表明しているが、実のところリストラの補償案に職員たちは応じていない。ネットに流れた動画では、以前ファーウェイの業務に就いていた同社の珠海南工場の職員たちが工場の門に集まって横断幕を掲げて抗議を行い、損害賠償を求めるなどリストラは難航している。

こうした業績の悪化、顧客の流失、従業員の抗議といった影響はフレックスが直面している主要な問題ではない。なぜなら中国政府の作成した「信頼できない企業リスト」に同社が入れられるのはほぼ確実で、今後、より深刻な問題が待ち受けているからだ。

陳 言 在北京ジャーナリスト

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ちん げん / Chen Yan

1960年、北京生まれ。1982年南京大学卒業後、経済日報入社。日本語通訳を兼ねて日本経済、アジア経済を報道。1989年から日本に留学、1999年に慶応義塾大学経済学研究科博士課程修了。2003年に中国に帰国し、月刊『経済』主筆、『中国新聞週刊』主筆を経て、2010年から日本企業(中国)研究院執行院長。2019年1月から月刊『人民中国』副総編集長。『中国鉄鋼業における技術導入』(萩国際大学出版会)など多数の著書がある。

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