ファーウェイが「代理戦争」する米国企業の存在 米中ハイテク利権の知られざる暗闘

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5月16日、アメリカ商務省産業安全保障局(BIS)がファーウェイと傘下の子会社68社を「エンティティ・リスト」に加えると、フレックスはすぐにファーウェイ向けの商品を差し押さえた。世界各地にある同社のOEM工場に対して、生産停止と商品出荷の拒否を含むファーウェイ向けの業務停止を一方的に通知したのだ。

ファーウェイとフレックスは、材料を送って加工してもらうというOEM生産モデルを採用している。ファーウェイが加工に必要な設備と材料を購入し、フレックスに送って加工を委託している。それゆえ、フレックスが一方的にファーウェイとの提携を停止すると、後続の生産業務に深刻な影響を及ぼす。

当時、ファーウェイの新しいフラッグシップ機である「P30」シリーズが飛ぶように売れていた時期であり、広東省珠海市のフレックス「南工場」にはP30シリーズの生産ラインがあった。これにより、ファーウェイは残った材料と生産設備を撤収せざるをえなくなった。

アメリカの法律を盾に返還拒否

5月20日の晩、ファーウェイは150台の貨物車を用意して国内の主要工場であるフレックスの珠海工場から材料と装置を撤収しようとした。現地メディアの報道によると、当日の晩、同工場のゲートには大きな貨物車が列を作り、その長さは6キロメートルに達したという。

しかし、この貨物車の大群は荷台を空にしたまま帰ることになった。フレックス側が「ファーウェイの材料には審査が必要」と表明し、関連する輸出規制法規に違反していないことが確認された後に搬出を許可すると頑なに言い張ったからだという。

後に10回以上にわたり交渉を重ねたが、フレックスはアメリカの法律を盾に、珠海の工場で差し押さえているファーウェイの物資を返還することを拒否し続けた。その間に双方で何度も解決策が提起されたが、フレックス側が同意を反故にするという状況が続いた。

その間、ファーウェイは弁護士を介してフレックスに対して書簡を送り、「フレックスの行為は深刻で、契約書に記されている紛争の範疇を超越している」ことを指摘し、ファーウェイに所有権があるすべての材料と装置を返還することを求め、応じない場合はそれに伴うすべての損失をフレックス側が負うことを伝えた。

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