高齢化が進む横須賀市で「無縁遺骨」が急増 スマホの普及で「家族に連絡さえできない」
2003年頃から、多くの自治体で引き取り手のない遺骨が急増している。その大半は、身元もわかり親族もいる、ごく普通の住民のものだ。ならばなぜ引き取り手がないのか。近年、家族や親族関係の希薄化がささやかれるが、家族や親族はそれほどまでに冷たくなったのだろうか。
引き取り手のない遺骨対策として、全国に先駆けて2015年に神奈川県横須賀市が始めた、行政版「終活支援事業」。その事業を提案した横須賀市生活福祉課の北見万幸さんは、市役所に務めながら、高齢化する横須賀市を約40年にわたり目の当たりにしてきた。
北見さんは、引き取り手のない遺骨が急増している理由に、新たな原因を導き出し、警鐘を鳴らす。
日本の高齢化の現状
横須賀市は高齢化率が約33%と神奈川県内では最高のレベルだ。
「横須賀市は2015年に一人暮らしの高齢者が1万人を超えましたが、問題は高齢化ではなく一人暮らしです。2040年には、10世帯中4世帯が若年単身、高齢単身など、1人世帯となります。ただ、一人暮らしでもほぼ誰かにも看取られており、孤独死はごくわずかです」(北見さん)
現在、エリア人口の1.2%が毎年亡くなっている。横須賀市の人口は約40万人なので、5000人近くが亡くなっている計算になる。ちなみに260万人都市である大阪市は、毎年約3万人が亡くなっている。
「毎日新聞大阪本社の記者さんが調べたところ、大阪市は2006年度は、1860件引き取り手がありませんでした。しかし2015年度になると、2999件に増加しています」
北見さんは、「大阪市はおそらく、引き取り手のない遺骨に数億円ほどかかっているのでは」と言う。
墓地埋葬法第9条で、住民票がある自治体ではなく、「死亡地の自治体が火葬せよ」と定められているためだ。墓地埋葬法は1948年にできた法律で、「住民登録がある人、親族がわかる人なら絶対に引き取り手が出てくる」ということを前提に作られているのだ。
また、総合病院のない市町村で倒れると、救急隊員は近隣の市町村の総合病院へ運ぶ。例えば、30分前まで隣の市で生活していたとしても、倒れれば総合病院のある市町村に運ばれ、死亡して、火葬する人が見つからなければ、その市町村の税金で火葬されるのだ。
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