高齢化が進む横須賀市で「無縁遺骨」が急増

スマホの普及で「家族に連絡さえできない」

財布を持たなくても、携帯やスマホがあれば、電車に乗れるし買物もできる時代。しかしその便利さは、持ち主が健康だということが大前提となっている。

例えば、一人暮らしの70代の男性が道端で倒れていたとする。通りがかった人が救急車を呼び、最寄りの総合病院へ運ばれる。所持していた携帯電話はロックがかかっており、「メディカルID」や「緊急情報」の登録はない。身分証明書から市の職員が104に電話をかけても、家族の電話番号がわからない。

男性は緊急手術を受けるが、翌日もまだ家族に連絡はつかない。治療のかいなく男性が亡くなった後、警察の調べでようやく他県在住の家族に連絡がいく。家族は死後数日経った男性の遺体、もしくは遺骨と対面する。しかし、もっと日数が経っても家族や親族に連絡がつかなければ、市の無縁納骨堂に納骨される。

つまり、身元が判明しているにもかかわらず、引き取り手のない遺骨が増えているのは、家族や親族から遺骨の引き取りを拒否される以前に、家族や親族に「連絡さえできない」というのが原因の1つなのだ。

住民の尊厳とQOLを守るために

昨年の引き取り手のない遺骨の53件中3件は、警察から「夫の墓がわからないから無縁納骨堂に入れてください」という連絡があり、無縁納骨堂に埋葬した。無縁納骨堂は、いっぱいになると、市の職員が骨と壺とを分け、骨は土嚢袋に入れ、別の墓地に埋める。

女性のほうが平均寿命が長いため、夫の遺骨は妻が納骨していることが多い。しかし、子どもがいない場合、遺された妻が倒れたとき、病院や警察では生前契約の有無は把握できないため、契約している葬儀社や墓の場所がわからず、無縁納骨堂送りになってしまう。

また、篤志解剖全国連合会によると、すでに亡くなっているはずなのに、献体を申し込んでいる人の遺体が大学に運ばれて来ず、献体不履行となるケースが1割に上るという。そして、冒頭で触れたように、大阪市では遺骨の約1割が無縁化している。

北見さんは、「現状のままでは、1割の住民の信教の自由(憲法第19条、20条)を、結果的に守れなくなる危険性がある。これらの原因は、お金ではなく情報伝達だ。生前に希望を聞くのは、住民から税金という利用料、会費を集めている市の役割ではないか」と考え、2018年5月から「わたしの終活登録事業」をスタート。

無料で住民の終活情報(緊急連絡先やかかりつけ医、お墓の場所や葬儀の生前契約など)を市が預かり、万一のときに病院や警察、消防の問い合わせなどに答えるサービスだ。元気なうちに必要な情報を登録してもらう制度で、横須賀市の住民であれば誰でも登録でき、所得制限も年齢制限もない。

また、2015年に開始した「エンディングプラン・サポート事業」は、一人暮らしで頼れる身寄りがなく、生活にゆとりのない高齢市民が対象だ。

低所得小資産で、親族に頼れない一人暮らしの高齢市民の場合、最低費用25万円を事業協力葬儀社に予納して生前契約をしておけば、市が生前の安否確認を行い、リビングウィル(遺言)を保管し、万が一のときには希望に沿った医療が受けられ、死亡後は協力葬儀社と市で葬儀や納骨まで行う。

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