高齢化が進む横須賀市で「無縁遺骨」が急増 スマホの普及で「家族に連絡さえできない」

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「放置すれば、いずれ墓地埋葬法第9条の対象となるだろう市民がいるにもかかわらず、対策を講じていない自治体がほとんどです。一人暮らしが増える以上、墓地埋葬法の対象者はこの先もどんどん増えるので、何らかの対策を打つべきでしょう。

また、『わたしの終活登録事業』は、誰もが自己実現的な葬送を選ぶことができる事業です。もしものときに必要な情報の登録しておくことで、本人の意思伝達を実現できる。住民の安心と尊厳、QOL・QODを守っていく必要があると考えています」(北見さん)

自治体単位で個人を支える取り組みが必要

横須賀市は、「誰も1人にさせない」というコンセプトで、この2つの事業を展開。その結果横須賀市民は、自分が死んだ後の不安や、遺された者の負担を大幅に軽減し、誰もが自己実現的な葬送を選択できる。生前契約などを行っている民間事業者は、信頼度や顧客満足度を向上させることに役立ち、市は、無縁納骨堂の遺骨や、火葬費など葬祭関係の支出を減らすことにつながっている。

もちろん、引き取り手のない遺骨が増えた理由は、携帯やスマホの問題だけではない。

ベースには、高度経済成長期に国民の大移動が起こり、親族同士が離れ、地縁が薄れたこと。1990年代には核家族化や少子化が進んだことによる、家族や親族の減少がある。そこへ2000年代に携帯・スマホが登場し、固定電話数を凌駕。情報環境が激変し、問題を後押ししてしまった。

万一のときは突然やってくる。北見さんは自分でできる対策として、携帯電話ケースの中に、家族の連絡先をメモした紙を入れているという。

今後は、もうかつてのように、家族や親族が個人を支えることはますます難しくなるだろう。終活に努力をし始めている住民に報いるためにも、自治体単位で個人を支える取り組みが全国に広がってほしいと思う。

旦木 瑞穂 ライター・グラフィックデザイナー

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たんぎ みずほ / Mizuho Tangi

愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する記事の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。

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