問題は、この引き下げのメリットは実質的には何もないのに対し、デメリットは明らかに「触れる」ほどの被害を与えるということだ。現実にはこのところマイナス0.2%程度で推移しており、これをターゲットとして設定しなおしても投資も消費も何も増えない。
一方、地方銀行や運用者にとってみれば、長期債の金利は明示的にマイナスであるから、受託責任としても、これに投資するわけにはいかなくなる。したがって、長期債の運用は実質的に「禁止」されるのである。
実は、これが金融緩和の目的だ。国債から実物投資につながる融資へ資金をシフトさせることによって、需要を拡大するのである。しかし、これは、一連の黒田緩和では機能しなかった。アベノミクスは当初機能した、と思われているかもしれないが、最初から効果ゼロであった。
景気がよくなった理由は、国債から株へ資金がシフトし、株価が上昇したことによって、雰囲気がよくなり、富裕層がキャピタルゲインを高額消費に回したからである。つまり、通常の金融緩和による持続的な企業投資の支援にはなっていなかったのである。だからこそ、景気回復の実感がない、生産性が上がらないということがいわれたのである。
黒田緩和はすべて資産バブル経由の効果のみ
アベノミクス、黒田緩和はすべて資産バブル経由の効果であり、円安効果(短期には需要、会計上の企業収益にプラス、長期には日本経済全体にとってマイナス)だけだったのである。
したがって、黒田緩和で効果があったのは、異常な規模の国債買い入れによる株式、不動産市場への異常な安値を破壊するショック療法、および株式、リート買い入れによる資産価格の直接的な上昇、国債からの資金シフトによる間接的な資産価格上昇がほぼすべてだったのである。
黒田緩和は7年目を迎え、効果の持続は限界を迎えているが、そもそも当初から、通常の持続的な実体経済への金融緩和の効果は存在しなかったのである。それを今さら手段がほぼなくなってから効果を出そうとしても、無理に決まっている。
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