日銀は必ず動くはずだが、一体何ができるのか 手詰まり感極まる中「次の一手」はどうなる?

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となると、最も伝統的な金融政策である短期金利の操作、今回は引き下げという、①になる。いわゆるマイナス金利の深掘りである。しかし、これは誰もが認識しているとおり、銀行が強く反対している。

2016年にマイナス金利を導入したときは、株価も下落し、大失敗といわれた。マイナス金利を解消するチャンスもわずかに1~2回あったのだが、これを見送ったのは、引き締めと捉えられるのが怖くてできなかったのではないか、と思われる。となると、誰もがやめてほしいと思っている政策を、さらに悪化させる方向にやる意味はない。

以上のように、メリットのある緩和政策は1つもなく、どんな組み合わせにしようと負の影響しかないのである。

「アリバイ作りだけの政策」をやりかねない

しかし、今回の記者会見を見ると、黒田総裁は次回に何か絶対にやるようにしか見えない。となると、実施する政策は、どのような観点で選ぶのだろうか。

それは「最も効果がないものをやる」ということである。何かやらないといけないから、何かやる。要はやった、というアリバイ作りだけの政策である。それで、効果がゼロ、逆に言えば悪い影響も少なくて済むもの、意味のないものをやることになるだろう。

それは何か。論理的には何もない。八方ふさがりである。絶体絶命のピンチのときは、開き直って、基本に返るしかない。4つの政策の中で、伝統的な金融政策、リーマンショックが起こる前に世界で行われていた金融政策(2000年以降の日本の「革新的な」政策でなく)は、短期金利操作だけである。

つまり、①だけがオーソドックスな金融政策、本来の金融政策である。マイナス圏というのは普通ではないが、ゼロに絶対的な意味がなければ、既成概念だけを捨てれば、マイナス金利はそれほど異常な政策ではないのである。ただ、評判が悪いだけのことである。どうせ何をやっても評判が悪いのだから、最も基本に忠実な短期金利引き下げを日銀は選ぶと私は予想する。

実際、黒田総裁は9月19日の会見の中で、日銀の政策の自由度は確かに2%の金利のあるアメリカよりは少ないが、マイナス0.5%の欧州よりはある、と述べている。10月には日銀は、短期金利をマイナス0.2%まで下げるという決定をすると予想する。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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