いまだに「紙とはんこ」を使い続ける会社の特徴 ほとんどの書類はデジタル化可能なのに

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では、日本では現在、どの程度デジタル化が可能なのでしょうか。下記の表は、一般的な取引の流れです。

取引をスタートする場合、まず社内のコンセンサスを稟議決裁の過程で形成していきます。その後、相手先を選定するために複数者から見積書を取得し取引先を決定します。選定した取引先と契約を締結し、サービス・商品の(受)発注、納品、検収と段階が進み、その後、請求書に基づき支払いを行います。このすべての帳票の流れを、紙とはんこでやり取りしている企業も多いと思います。

経理、総務、法務の現場では

稟議書には関連者それぞれの三文判や「シャチハタ」が並び、契約書には実印を用い、発注書、納品書、検収書、請求書にも担当者印や会社角印などが押されます。紙を印刷し、場合によっては製本・袋とじして捺印、それを郵送などで流通させ、受領した帳票を保管するという多大な手間と時間を要します。

もっとも、現状の法制度の下、ほぼすべての文書を紙とはんこを用いずにデジタル化できるのです。

経理業務を例に挙げれば、1998年に制定され、数度の改正を経た電子帳簿保存法があります。一定の要件を満たせば、仕訳日記帳や総勘定元帳、補助元などの会計帳簿や領収書、請求書など証憑の帳簿書類に関してデジタルデータを原本として扱うことが認められ、紙の保存を大幅に削減できます。2019年9月30日から、過去の領収書、請求書、契約書などの重要な証憑も一定の要件を満たせば、デジタルデータが原本となり紙は廃棄可能になりました。

総務業務はどうでしょうか。会社法で保存を義務付けられている書類(株主総会議事録、取締役会議事録といった会議体の議事録、定款、計算書類および付属明細書、会計帳簿など)もデジタル化が可能です。会社法の書類に関しても2005年のe-文書法の施行に合わせ、デジタルでの作成・保管が可能になりました。とくに取締役会議事録のデジタル化は、作成頻度や持ち回りで捺印を求める手間から効果が期待できる領域だと思います。

法務業務もしかりです。昨今は「電子契約」というワードを耳にする機会が増えてきました。大きなメリットの1つに印紙税がかからないことが挙げられます。電子契約は印紙税法第2条で言うところの文書ではないため、印紙税の課税対象にはならないのです。高額の印紙税が必要となる金銭消費貸借契約や不動産売買契約を扱う企業が導入を進めています。

電子契約のメリットは印紙税だけではありません。契約書の印刷、製本、袋とじ、持ち回りで行う捺印、回収、保管、検索など、紙による手間やコストを大幅に削減できます。

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