K-POPオーディションに挑む日本の女子中高生 「韓国でアイドルになりたい」という強固な夢

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確かに「数」の問題に限定すれば、中国などのほうが圧倒的に多い。しかしムン社長によれば「ちゃんとお金を払ってCDなどを買ってくれる。コンサートにも足を運んでもらえる。消費意欲は日本が他国を完全に上回っている」のだそう。

TWICEの成功がそれを裏付けた。「聴く、見る」だけに飽き足らなくなった層が、TWICEの日本人メンバーの活躍に触発され、自らアイドルを目指すようになった。正しい「消費」がさらに加速する。

「日韓の関係悪化は、いまのところ業界には大きな影響を及ぼしていません。もちろん油断はできませんが、若い層に根付いたK-POP熱は、簡単に冷めることはないでしょう」

オーディションでは「表現力」が求められる(筆者撮影)

ちなみに、オーディションで注目するのは主に「表現力」だという。

「いまの段階で歌やダンスに多少の難があったとしても、練習すればどうにかなります。1つ2つミスしたところで、それほど気にはなりません。しかし、表現力だけは個性がはっきり表れますからね」

完璧に整っていることが大事なのではない。突き刺さるような眼力はあるか、激しさや気だるさを緩急つけて演じることはできるか。その部分を注視している。

オーディションをハシゴする若者も

いま、ソウルでは大手事務所から、林立するK-POPスクールまで、毎週のようにさまざまなオーディションが開催されている。長期滞在し、オーディションをハシゴする若者も少なくないという。

むろん、合格してもデビューできる保証はない。韓国内にもあまた存在するアイドル予備軍との闘いも避けて通ることはできない。TWICEはあくまでも特別な存在だ。

「そのことはちゃんと理解しています」

静岡県から来た中学校1年生のミナさん(仮名、13歳)は、生真面目な表情で訴えた。

「チャンスがあるならば、とにかく挑戦したいんです」

反目し合う大人たちを尻目に、彼女たちは「夢」を賭けた闘いのなかを進む。

安田 浩一 ノンフィクションライター

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やすだ こういち / Koichi Yasuda

1964年生まれ。週刊誌記者などを経て2001年よりフリーに。著書に『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)、『「右翼」の戦後史』(講談社新書)、『団地と移民』(KADOKAWA)、『愛国という名の亡国』(河出新書)など多数。2012年『ネットと愛国』(講談社)で講談社ノンフィクション賞を受賞。2015年『G2』(講談社)掲載記事の『外国人隷属労働者』で大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞。

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