K-POPオーディションに挑む日本の女子中高生 「韓国でアイドルになりたい」という強固な夢
わずか1分間の審査である。こわばった気持ちを振り払うように、力強くステップを踏んだ。俊敏で、しなやかな身のこなしだった。スカウトたちはスマホやビデオカメラで、その動きを追う。
踊り終えて息も絶え絶えのユウキさんに、声をかけた。
──うまくできましたか?
歌やダンスを精察する能力も、ましてやK-POPの知識も持たない私には、その程度の言葉しか出てこない。
ユウキさんはようやく緊張が解けたのか、「エヘッ」と照れたように笑った。
「自分では精いっぱい踊りました。どうだったのかなあ。上手な人がたくさんいるから、あまり自信ないかも……」
ステージ上とは打って変わり、顔には中学1年生の素の表情が浮かんでいた。そこにはスカウトの前で大きなミスもなくやり切ったという自信と、もっとうまくできたかもしれないという小さな後悔が同居していた。
「でも」とユウキさんは続ける。
「今回がダメでも、何度でも挑戦します」
決意をにじませ、挑むような目つきが印象的だった。
参加者41人中、日本人は16人
8月3日、ソウル市内で開かれたオーデションに参加したのは41人。うち日本人は16人で、ほかに米国、中国、マレーシア、香港といった国からもアイドル志願者が参加した。
主催したのはソウル・弘大(ホンデ)でK-POPスクールを運営している「アコピア」。経営母体となるのは1999年から日韓交流事業を手がけているNPO法人「アジア希望キャンプ機構」である。日本にも活動拠点を持ち、日韓の若者たちによるボランティア活動、議員やジャーナリストなどの交流事業を展開しているが、2014年からK-POPスクールの運営も始めた。ダンスや歌を学ぶ、いわゆるK-POP留学生を受けいれているだけでなく、世界中のアイドル志願者を集めた「グローバルオーディション」も定期的に開催している。
「みんなレベルが高いでしょう」
日本に留学経験を持つチョウ・キュウチョル代表(54歳)が流ちょうな日本語で話す。
「今回も含めて、参加者のほとんどが中学生、高校生の10代女性です。もちろん圧倒的に日本人が多い。わざわざ韓国まで足を運んでいるのですから、遊び半分で参加する人はほとんどいません」
穏やかな表情で話すチョウ代表だが、わずかに顔を曇らせる瞬間があった。悪化する日韓関係について言及したときだ。
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