「博士の卵」半減!科学王国日本の超ヤバい未来 近い将来「ノーベル賞ゼロ時代」が現実となる
このため、大半の理工系博士課程修了者は、科学者となるのを諦め、開発研究やエンジニアの道に進むか、身分が不安定な任期付きの研究職を転々とすることになります。
博士課程修了者の就職状況のデータを見ると、悲惨な実情が明確に浮かび上がります。修了者のうち、新年度の5月時点で就職先が決まっている人は7割です。残りの3割は期限付き研究職のポスト待ちです。
7割のうち、研究職を得た人は4割弱で、6割は研究職を諦めています。研究職を得た人のうち、大学助教や公的研究機関の研究員など雇用期限のない安定したポストに就いた人は25%にすぎません。
整理すると、博士課程を修了した人のうち安定した研究職のポストを得た人は、全体の7割の就職者の4割の研究職の25%ですから、全体の7%ということになります。
つまり、博士課程を修了しても、安定した就職先に恵まれるのは、10人に1人にも満たないということです。諦めずに研究を続ける人は、40歳を過ぎても、3年から5年の任期付きの不安定な職を転々としています。このような状況で、いったい誰が科学者になろうという夢を持ち続けることができるのでしょうか。
日本人のノーベル賞受賞者は24人。外国籍の日本出身者を含めると27人です。このうち、科学者は24人ですが、その大半は20歳代に大学などで安定した職を得、半数近くは20代、30代のうちに授賞理由となった研究を行っています。
若手研究者の大半が任期付きの研究職で次の仕事に汲々としている状況で、未来のノーベル賞科学者が生まれるはずもありません。
気がつけば借金
修士課程の学生が博士課程進学を躊躇するもう1つの大きな理由は、経済的な負担が大きいことです。奨学金事業を行っている日本学生支援機構の調べ(2016年)では、大学院博士課程学生の年間生活費は平均で225万円。大学・大学院博士課程の通算9年間に必要な学費・生活費などの資金は平均値で1779万円に上ります。
標準的な収入の家庭が気軽に支出できる額ではありません。もちろん、そのために、奨学金や学費免除の制度がありますが、日本の学生支援制度は非常に寂しい状況にあります。
アメリカと比較すると、アメリカでは大学院生の8割がなんらかの学費免除や免額を受け、全体の6割近くが全額を免除されているのに対し、日本では65%の大学院が学費免除・免額をまったく受けておらず、全額を免除されている学生は僅か1.7%にすぎません。差は歴然です。
奨学金の状況もお寒い限りで、日本には返済不要の給付型の奨学金はほとんどなく、大半は貸与型です。卒業後には返済が待っています。大学を卒業後、奨学金を返済できない大卒者の増加が社会問題になっているのは、ご存じのとおりです。大学院の修士・博士課程修了時に500万円以上の借金を抱える人は全体の1割に及びます。
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