「博士の卵」半減!科学王国日本の超ヤバい未来 近い将来「ノーベル賞ゼロ時代」が現実となる
しかし、深刻なのは、論文数が減っていることよりも、そうした事態を招いている研究環境の劣化にあり、さらに、深刻なのは、研究環境の劣化が原因で、科学者を目指す若者が減少していることです。
日本の大学の博士課程の空洞化が進行しています。このままでは、将来、日本人科学者が激減してしまう危険性が非常に高くなっています。
博士の卵は15年前の半数
このような危機的な状況は、文部科学省が毎年発行している『科学技術白書』に公表されているデータが裏づけています。
まずは、大学院博士課程の進学者の減少です。大学進学率は一貫して上昇を続けています。2018年には57.9%にまで上昇しました。大学進学者の方が多数派です。
一方、大学院修士課程の進学者は2010年以降、減少傾向にあります。博士課程は2003年以降、ほぼ減少を続けています。2003年には1万8000人ほどだった博士課程進学者は、2017年には1万5000人ほどに減りました。
さらに深刻なのは、将来、科学者になる可能性のある「博士の卵」の減少です。近年、大学院ではキャリアアップや学び直しをする社会人学生が大勢学んでいます。
そのこと自体は好ましいことですが、社会人学生が研究者となる可能性は大きくありません。そのため、将来科学者となる可能性の高い「博士の卵」の実数は、もっと少なくなります。
理工系と人文社会系の別や一般学生と社会人学生の別などさまざまなデータを総合的に分析すると、理工系の一般学生の博士課程進学者、つまり「博士の卵」の実数は、15年前の半分ほどになっていることがわかりました。大学院修士課程の学生が博士課程に進学することを躊躇するようになってしまっているのです。大変なことです。
いったいどうして、こんなことになっているのか。理由は簡単です。日本の研究現場には、大学院博士課程を修了し、論文審査に合格して晴れて博士になっても、研究者となって働くことのできる仕事がないからです。
研究者の仕事は、基礎研究、応用研究、開発研究に大別できます。このうち、平和賞や経済学賞は別として、ノーベル賞の大半は基礎研究分野の科学者に授与されています。ノーベル工学賞がないことが象徴するように、ノーベル賞は基礎研究を重視しているのです。
私企業の研究所は開発研究を重視しているため、基礎研究を専らの仕事とする研究者となるには、大学か公的研究所に職を得て研究する以外に道はありません。そして、博士課程修了者が新米科学者として最初に就くポストは、大学の助教か公的研究所の研究員です。
しかし、このポストが絶望的に不足しています。背景には、大学の研究者(教員)の高齢化という構造的な問題があります。40歳以上の研究者が大半を占め、博士課程を修了した若手研究員を受け入れるポストの絶対数が圧倒的に不足しているのです。
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