「#老害」ネット上に溢れる"世代間憎悪"の実態

リア充のまま死んでいく高齢世代への拒絶

一方で、高齢者へのネガティブな書き込みに、同じSNSできっぱりと異を唱える若い世代もいる。技術系の仕事に携わる20代の会社員の男性は、「高齢者を悪く言う人が多くてうんざりする。想像力が欠けているのでは」という趣旨をツイッターに書き込んだ。

違和感を覚えたのはやはり、4月の池袋の交通事故。会社の同期が「事故を起こした老人が死のうが知ったことではないから刑務所へ入れろ」と言っているのを耳にした。男性は反論した。だが同期は納得がいかない。

「自分が高齢者になったとき、親が高齢者になって、もし事故を起こしてしまったときを想像したことがないからでしょう。高齢者、現役世代という属性だけで『あの人は死んでもいい』『あの人は死んではいけない』と選別していることになり、とても危険な思想に感じる」

その背景には「ゆとり教育」や「若者の○○離れ」といった言葉も影響していると男性は指摘する。勝手にレッテルを貼られ、批判にさらされてきた結果、上の世代へのヘイトを募らせていった人も多いのでは、と。そしてこうも言う。

「これまでの鬱憤を晴らすために同じようにレッテルを貼って高齢世代を叩く、という構図が少なからずあると思います」

みんな公平に不幸になれば、憎悪は消せるかもしれない

高齢者への負の感情がもたらす不穏な未来を、作品で表現する人もいる。

映画監督の早川千絵さん(43)。「10年後の社会」をテーマにしたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」(昨年11月公開)のうちの一本「PLAN75」で、75歳以上に国が安楽死を勧める特別支援制度「PLAN75」が創設された日本を描いた。きっかけは障害者施設の入所者19人が殺害された「やまゆり園事件」(2016年)だった。

「事件の前から、高齢者に限らず、生活保護を受給するなど社会的に弱い立場にいる人たちに対して世間の風当たりがすごく強くなってきているなと。『自己責任』『迷惑かけている人たち』みたいな声が聞こえてくるのが恐ろしいと思えたのです」(早川さん)

現在、この作品の長編を制作中だ。準備として高齢者への取材を重ねている。PLAN75のような安楽死制度ができたら、どう思うかを尋ねると、「あった方がいい」という声が多数を占めた。「人に迷惑をかけたくない」「死ぬときは自分で選びたい」という理由からだ。

迷惑をかけられていると感じる若い世代と、迷惑をかけたくないと思う高齢者。なぜギャップが生まれるのか。

「お互い接する機会が減ったので、双方の『顔』が見えてない。老人ホームと幼稚園を同じ敷地につくるとか、高齢者へのボランティアの時間を中高校生の必修にするとか、逆に高齢者が子どもたちを世話してあげるとか、そういう良い体験があれば、『老人死ね』とか『年寄り迷惑だ』とか言わなくなるんじゃないかと思います」(同)

世代間憎悪を少しでも良い方向に導くには長い年月がかかるだろう。前出のマライさんも「簡単な解決の道があるとは思えない」としつつ、あえて逆説的な言い方をすれば「みんな公平に不幸になる」ならば納得される社会に行き着くのではと言い、こう悲観する。

「今の高校生たちは、『平等に普通に暮らす』を目指してると思うんです。それがあと数年たってうまく就職できないなどで、いわゆる非リア充層に入ってしまうと、目指す方向が『普通』ではなく『みんな同じような悪夢の中で生きるなら、まあそれもいいか』といった感じに変わっていく。若者も高齢者も平等に不幸になることで世代間の憎悪は消せるかもしれませんが、その先にある社会もまた、怖い世界です」

(編集部・小長光哲郎)

※AERA 2019年9月23日号より抜粋

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