auとソフトバンク「新販売手法」の手痛い代償 新ルールの盲点突く顧客囲い込みが逆効果

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総務省が新たな規制に動けば、auとソフトバンクの新プログラムの狙いは崩れるどころか、逆に大きなマイナスになる可能性も出てきた。

これまでは、auやソフトバンクなどのキャリアと、格安スマホを展開するMVNO(キャリアから回線を借りて営む事業者)の間では、端末の品ぞろえで大きな格差があった。キャリアは新型iPhoneなどハイスペックな端末を幅広く取りそろえ、通信契約とセットの値引きでユーザー獲得につなげてきた。一方、MVNOの端末の品ぞろえは型落ちが中心で、最新のモデルを使いたいユーザーを取り込みにくかった。

だが、SIMロックの即時解除を義務づけられれば、この状況も変わる。北氏は「そうなれば、結果的に新プログラムはMVNOユーザーにとって朗報になる。今後は最新のハイスペックの端末を使いたければ、auやソフトバンクのプログラムを使って端末だけを買い、即時にSIMロックを解除してもらえばいい。そうすれば安く使える」と話す。

SIMロック解除義務づけでau、ソフトバンクに逆風

auやソフトバンクは、このままいけば端末の品ぞろえというアドバンテージを失うだけではない。他社のユーザーから高額な端末を大幅値引きで買われた場合に採算が成り立つのかという問題が出てくる。

もっとも、SIMロック解除の義務づけ案が浮上する前の段階では、両社は採算が合うとしている。そう説明するのは、端末売買だけでの採算が厳しいことを認めれば、新プログラムでの端末値引きは、通信契約とのセットを前提とした設計にしていることを認めることになるからだ。

9月11日の総務省の有識者会議で、ソフトバンクの吉岡淳・渉外本部約款・サービス部長は「端末の売買だけでビジネスが成り立つ設計で、端末と通信の分離という趣旨にはまったく反していない」と発言。KDDIの長谷川渡・次世代ビジネス企画部長も12日の発表会で「端末の販売で採算を取れるように考えている」と述べていた。

だが、本当にそうなのか。auやソフトバンクと同じようにハイスペックの端末を扱うNTTドコモの関係者は「かなり厳しいはずだ」と懐疑的だ。

他の携帯電話事業者にも大幅値引きしたハイスペック端末を本当の意味で開放せざるをえなくなる「SIMロック解除の義務化」がこれほど急速に進むとは、auもソフトバンクも想定していなかったに違いない。

「策士、策に溺れる」結果となるのだろうか。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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