クルマをサービス起点として考える時代の勝機 モビリティ革命を発展させる「CARS」とは?
さらに、調査をすすめ、自動車生活の豊かさを支えている要件の解明を試みました。
地域住民は、「クルマ」は特別なものであるが、専門の店舗で高度なサービスを受けるという認識ではなく、「自らが世話をするもの」として、日常の生活習慣に組み入れていたのです。あたかも、ペットと生活を共にし、ペットの世話をするように。「衣食住」ならぬ、「移食住」といった感覚だったのです。なので、運転することも、メンテナンスすることも、自らの地域生活を豊かにしていく、Do it Yourself の1つとして捉えられていたのです。
過疎高齢化が進む地域は、コミュニティーエリアを広域化しなくてはなりません。広域化に向け一躍を担っていたのは、ホームセンター等の、生活シーンに応じた売場での啓発や、定期的に開催される実演会などの催しでした。とくに実演会では、共通な課題と共通な目標を有した住民が、地域文化の垣根を超え集まります。そこで得られた知識は、生活を、自らで豊かにしていくという楽しみに転換されていきます。つまり、技術の進歩を受け入れ、育んでいく活動として地域に定着させるきっかけとなっていたのです。
地域住民が、新しい習慣を受け入れるには、生活者視点の解説が重要なポイントになります。そのためには、提供する店舗の従業員が実際に商品やサービスを使ってみて、その価値を理解しておくことが必要です。そうすることで、店舗の従業員は生活者に「提案」というサービスを通して、「知識」を分配することができるからです。地域住民との接点を有する小売店の従業員は、「地域住民で且つ、店舗のロイヤルカスタマー」であればあるほど伝播力は高まり、パラダイムシフトが緩やかに実現されていくのを目の当たりにしました。
”CARS”というコンセプト
このような調査結果より、「クルマで移動するニーズ」「技術発展を受け入れる生活様式」を創造していくことが、モビリティ革命の普及・拡大にもつながると思い、2016年10月に、コンセプトをまとめ、キーワードの頭文字をとって「CARS(Connectつなげる、Automation自動化、Repeat繰り返す、Share&Serviceサービスの分配)」と名付けました。
次世代モビリティの実用化については、すでに国や自治体の主導で数多くの実証実験が行われていますが、自動運転をはじめとする技術的な検証がほとんどです。そこで私は、生活者が技術発展に関する知識を育みながら、自らの新しい移動シーンを創り上げる『CARSコンセプト』に関して、重要保安部品でありながら関心の低いタイヤを例に取り組みました。
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