サウジ爆撃で避けられない、アメリカの「報復」 国際社会の掟は「やられたらやり返す」

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最後の4番目のBはイスラエルのネタニヤフ首相。愛称がビービーという由来から、Bの一員とされる。9月17日はイスラエルの総選挙の投票日で、日本時間19日までに結果が判明する。野党と勢力が拮抗しており、場合によっては組閣が失敗し、退陣も想定されよう。この時期にイラン側が悪役となることで、敵であるイスラエル政府の苦境を救うことは考えにくい。

結局、フーシ派はイランが完全に統制している組織ではないだけに、サウジアラビアやアメリカの犯行説についても、まったく根拠がないわけではない。しかしアメリカでさえ、「背後にイランがいる」というだけで、ホワイトハウスの記者会見でも証拠を挙げなかった。

もっとも、「やられたらやり返す」のが、アメリカを含めた国際社会の掟。なめられたらおしまいだ。

「アメリカはイランに対する軍事攻撃と反撃能力をシミュレーションしている」(元外務省幹部)ことは否定できない。ただ、イランとその配下の勢力(ヒズボラやフーシ派など)の反撃能力が侮れないことが、今回のサウジアラビア攻撃でも証明されたのは間違いない。もしドローンだとしたら、安価な機器によって、あれほどの成果が上げられるのだ。アメリカとして安易にイラン攻撃には踏み切れない環境だろう。

とはいえイランの苦境が続いているのも事実。アメリカはイラン核合意から一方的に離脱した。調印国の英仏独とロシア、中国が核合意遵守派だが、アメリカの金融パワーを含む2次制裁に立ち向かえる国はない。イランに対する過酷な経済制裁が続き、限界にきていることは確かだ。

大統領再選に向けてのアピールが最優先

トランプ大統領の外交はすべて2020年の大統領再選に向けられている。

イランの場合でも、トランプ大統領の脳裡には、イランの最高指導者ハメネイ師とロウハニ大統領と会談し、映像として世界に報道されることを望んでいるはずだ。その会談で、オバマ前大統領が締結した核合意よりも「厳しめ」な合意ができれば、選挙民に成果を誇示できる。

ただし、イランにとってトランプ大統領の思惑は、虫のいいディールだ。とてものめないし、仮にのんだら、政権の正統性と根拠が失われる。

アメリカ対イランのチキンレース(度胸試し)は2020年まで続く。今回のサウジアラビア攻撃で、その直前までほのかにあった、トランプ大統領とロウハニ大統領の国連総会での会談、経済制裁の緩和という”希望”は消えてしまった。これが残念ながら現実だ。

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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