サウジ爆撃で避けられない、アメリカの「報復」 国際社会の掟は「やられたらやり返す」

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原油価格は急騰後に落ち着いている。「サウジの原油生産の半分が停止」という材料の割に反応は鈍い。1973年の第1次石油危機の際、原油価格はほぼ4倍になった。1979年のイラン革命に伴う第2次石油危機で、原油価格はほぼ3倍になった。

国際社会は冷静に対応しているが、理由はいくつかある。日本を含め1次エネルギーに占める石油の比率が劇的に低下し、天然ガスの比率が高まったこと、アメリカがシェールガス・オイルの増産でサウジアラビアやロシアを超え世界最大の産油国になったこと、などが挙げられる。今後、ドローンという、反政府ゲリラでも扱える安価で手軽な兵器による石油施設攻撃が続けば、供給不安が高まり、第3次石油危機という事態もありうるが、すぐというわけではないだろう。

さて、長い文明を誇る中東の地域大国、イラン。暴力団にたとえて恐縮だが、中東におけるイラン(=組長)の長年の資金や人材の投入により、シーア派つながりで、配下の組織(=舎弟)が育っている。レバノンのシーア派武装組織「ヒズボラ」は、イランにとって最も頼りになる直系組織だ。これがイスラエルの脅威になり、シリア内戦でもアサド政権側に立って活躍した。

それに続くのが、イランによるグリップはまだヒズボラほどではないものの、”舎弟扱い”の組織になっている「フーシ派」だ。サウジが「攻撃はフーシ派」と断言し、それが事実なら、トランプ大統領が「背後にイランがいる」と語ったことは、ある意味で筋が通る。

さらにイラクだが、国民の60%がアラブ人の「シーア派」という事情を反映し、シーア派主導の政権と軍が形成されており、中東でイラン主導のシーア派ベルト地帯の祖型ができつつある。サウジアラビアの油田地帯である東部州は、実はシーア派住民が多数を占める地域だ。

イラン攻撃に積極的な「グループB」の4人

今回のドローン攻撃について、イランはもちろん否定する。イランにとって、この時期に冒険的な行動をするメリットはない。アメリカでは、イラン攻撃に積極的な「グループB」と命名された4人の指導者のうち、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が更迭された。イランにとってはひと安心だろう。

次のBである、UAEのムハンマド皇太子(ムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子)は、6月以降の「アメリカ・サウジアラビア対イラン」の軍事的緊張から逃げた。UAEはイランとのペルシャ湾における航行の協議を再開し、ホルムズ海峡を防衛する有志連合軍への不参加を表明。さらにイエメンに対するサウジアラビアとの同盟軍からの撤退も一時表明したのである。

これもUAEの置かれた地図を見れば理解できる。イランとはペルシャ湾を挟んで近い距離に位置する。UAEは7つの首長国から構成され、首位は産油国アブダビで、2番目はドバイだが商業国であり、イランとの戦争を望まない。つまりUAEの背信が大きな要因となり、アメリカがもくろんだホルムズ海峡防衛の有志連合は参加者が減り、今のところ挫折した形である。

そして3番目のBだが、サウジアラビアのムハンマド皇太子(ムハンマド・ビン・サルマーン)は、UAEのムハンマド皇太子を師匠にしていただけに、動揺しているはずだ。

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