東京ゲームショウで露呈したeスポーツの矛盾 賞金は「報酬」として受け取れるはずだが…

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プロライセンスができて1年半経過する中でプロゲーマーの価値が上がり、それを証明する手段としてのプロライセンスが一定の価値を得ていることはJeSUが言わなくても肌で感じてきています。ある意味、調理師免許に近い感覚になってきたのかもしれません。調理師免許がなくても飲食店を開業(プロになる)ことはできますが、持っていたほうがある程度の知識と技量を持っていると、取引先や客に判断される指針の1つとして効果があるわけです。

ライセンスが賞金問題に関して何の効力もないことが発表されたにもかかわらず、以前の規定のみに準拠し続けるのは、JeSU参加メーカーとして、JeSUを尊重しているのか、していないのか、まったくわからなくなってしまいます。どちらにせよ、JeSUがメーカーに対して強制力がない以上、賞金の額や、それを支払える対象を決めているのは、メーカーにほかなりません。メーカーがゲーム業界全体を盛り上げるため、自社のコンテンツをより買ってもらうために、eスポーツをより広めたいのであれば、今回のような措置は自分たちの望みに対して正反対の行為と言えます。

自社が運営するeスポーツイベントに参加する選手をライセンスによって縛って、自分の思いどおりになるようにすることを良しとすることはないはずです。また、JeSUに対しても、国への折衝など面倒なことを押しつけ、決まったことに対して、気に入らない改変であれば無視するようなことを続けるのであれば、JeSUの存在意義そのものも疑いたくなってしまうのではないでしょうか。

ももち選手は配信した動画で、JeSUやカプコンと話し合う予定があるとのことを言っていました。もし、ライセンスが発行されることで残りの賞金が出るのであれば、ももち選手には、即座にライセンスを取得し、賞金を満額でもらってほしいところです。

賞金が振り込まれたらライセンス返上もあり

どうしてもライセンスのあり方に納得がいかなければ、賞金が振り込まれたことを確認したら、ライセンスを返上すればよいのではないでしょうか。賞金のためにライセンスを取るのはおかしいと思うかもしれませんが、そこまでこだわる価値がライセンスにあるのかは、今となっては疑問です。ももち選手がこれまでに訴えたかったことは、多くの選手、多くのファン、多くの関係者には十分届いており、これ以上訴えかけ続ける必要はないのではないでしょうか。

手段と目的が入れ違ってしまうことは、多々あります。今回の件も、プロライセンスの発行は、安心して高額賞金がかかった大会を開けるようにすること、選手としては受け取れることを目的としていました。つまりプロライセンスの発行は手段であって、目的は高額賞金の大会を開くことです。プロライセンスの価値を高めることでも、プロライセンスを使ってプロ選手を支配下に置くことでもありません。

高額賞金の大会を開くという目的が今回のJeSUの発表会でクリアされた以上、プロライセンスの有無によって賞金の額を変えることやジュニアライセンスに関する賞金を放棄するという要項は、必要のないものであることは明白です。そもそも高額賞金をかけることすら目的であるかと問われると、それすら手段であり、本来の目的は日本でeスポーツを普及させることです。今回の一連の行動を見て、多くのゲームユーザーやeスポーツを応援する人たち、さらにまだ興味を持ち始めたばかりの人たちが、eスポーツに対して憧れを持つようになるのか、呆れ果てるのか、考えれば答えは自ずとでるのではないでしょうか。

岡安 学 デジタルライター

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おかやす まなぶ / Manabu Okayasu

eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、ウェブや雑誌、ムックなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas

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