東京ゲームショウで露呈したeスポーツの矛盾

賞金は「報酬」として受け取れるはずだが…

これと同様に、今回優勝したももち選手には、10万円の賞金、厳密には副賞のゲーミングモニターの代価である3万9800円が差し引かれた6万200円の賞金のみが手に渡ることになったと、自身の動画配信で語っています。

ももち選手は、プロライセンスの取得を拒否しているものの、取得する基準(件の大会でファイナリストになること)は満たしています。そのため、カプコンカップで賞金が発生した時点、今回のアジアプレミアで賞金が発生した時点で、プロライセンスを取得すれば、満額もらえたことは間違いないでしょう。

しかし、賞金を受け取るためだけにライセンスをもらうことを良しとしないももち選手は、今回もライセンスの発行を断ったのではないかと考えられます。そう考えると、頑なにプロライセンスを拒否するももち選手が「プロライセンスの取得を認めてしまえばいいのに」という見方もありますが、それと同時にプロライセンスにこだわっているカプコンもいかがなものかと思う次第です。

そもそもなぜプロライセンスが作られたのか

そもそもJeSUがプロライセンス制度を作った理由は、景品表示法により高額賞金が出せなくなることを回避する手段として考えられたものだったわけです。eスポーツが日本で発展、普及することに対して、足かせとなりかねない高額賞金問題に対して解決の糸口として、策定しています。

高額賞金を出すようになったのは、海外の大会が高額賞金により盛り上がっている側面もあり、eスポーツの魅力の1つとして必要だと考えたからです。つまりゲームメーカーにとっても、選手にとっても、eスポーツ団体にとっても、プロライセンスの発行が幸せになるためのカギとなるものでした。それが、eスポーツ選手を苦しめる結果となるのは、本末転倒なのではないでしょうか。

2019年度日本eスポーツ連合(JeSU)活動報告&発表会に登壇するJeSU岡村会長(筆者撮影)

先の東京ゲームショウでのJeSUの発表会の後に行われた囲み取材で、筆者は岡村秀樹会長に今回のJeSUの発表に関して、JeSUに参加しているメーカーへ強制力があるかどうかを確認し、JeSUはメーカーに対して強制する立場でもなければ権限もないとの回答を得ています。

リアルスポーツリーグのように機構側と各チームの関係が完全に主従となっているわけではなく、あくまでもJeSUはeスポーツ発展に寄与するための団体であるわけです。つまり、今回の賞金問題についても、大会を運営するメーカーが最終的な判断をする権利を有しており、JeSUは介入することはできないわけです。

また、岡村会長には、プロライセンスがeスポーツの賞金を仕事の報酬としてもらうことができる唯一の手段としてきたことに対して、今回の発表により、最大の意義を失うことについても聞きました。「プロライセンスは形骸化してしまうものだが、ある種のステータスであると考えている」と岡村会長は言っています。

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