日経平均株価1万6000円予想を変えない理由

2度あることは3度あっても不思議ではない

具体的な材料としては、たとえば一部報道で、中国が、ファーウェイに対するアメリカ企業の禁輸措置を緩和してもらうかわりに、農作物の購入を進める、といったものが何度か伝えられた。あるいは、9月13日(金)のブルームバーグの報道では「米中間で暫定合意が検討されている」と報じられ、同日にドナルド・トランプ大統領が、そうした暫定合意は検討はしていると述べたことも、米中間の協議が前向きに進むとの感触を市場に広げた。

ここで、そもそものアメリカ側の交渉スタンスを確認してみよう。当コラムでも何度か述べたが、現時点ではロバート・ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表が、トランプ政権の基本姿勢を主導しているように思われる。同代表の基本路線とは、「仮に中国が、アメリカから航空機や農産品を大量に購入することになり、米中間の貿易不均衡が解消されたとしても、それは意味がないものであり、構造問題が解決するかどうかが最も重要な点だ」というものだ。ここでいう「構造問題」とは、中国による知的財産権(著作権、特許権など)の侵害、IT産業などへの巨額の補助金、米国企業に対する先端技術の中国への移転強要の、「3点セット」だ。

いままで種々報じられた「中国がファーウェイの禁輸緩和と農産品購入のバーターを提案している」、という内容は、ライトハイザーが「意味のないものだ」とした分野(単なる中国の米国からの輸入増)での妥結に過ぎないと言える。あるいは、中国側の提案は、構造問題には手を付ける気が全くなく、農産品の購入でお茶を濁そう、と宣言しているに等しいとも言える。

とすれば、「米中間の交渉が大きく進む」、などは想定しがたい。実際、前述の9月13日(金)のトランプ大統領の暫定合意に関する発言でも、そうした一部合意は検討対象ではあるが、基本路線としては構造問題を含むすべての事項について合意することが望ましい、と釘を刺している。

もう1種類の、市場に米中通商交渉が進展するとの期待を抱かせたものとしては、10月1日(火)からと予定されていた、2500億ドル分の対中輸入についての追加関税率だ。25%から30%に引き上げる件について、引き上げを10月15日(火)に先送りする、との米政府の発表もあった。10月初めに中国の劉副首相が訪米し、ライトハイザー代表や、スティーブン・ムニューシン財務長官と会談するため、その進展を待とう、という主旨だと解釈できる。

「2度あることは3度ある」

しかし、この追加関税の先送りについて、既視感を覚えた向きも多いのではないだろうか。というのは、同様のことを過去に2回、トランプ大統領は行なったからだ。

1度目は、2000億ドル分の対中輸入について、今年初から関税率を10%から25%に引き上げる予定であった。大統領は、両国間の協議が進行中であったため、進展を待つとして、関税率引き上げの延期を表明した。ところが5月5日(日)になって、協議の進展がみられなかったため、「5月10日(金)から25%に引き上げる」といきなり発言し、引き上げが実施された。これがゴールデンウィーク明けの日本株に痛打となった。

2度目は、約3000億ドルの対中輸入について、追加関税の導入が示唆されていたが、6月29日(土)の大阪での米中首脳会談直後に、これからの協議を待って、追加関税の発動をしばらく見送る、と大統領は語った。ところがこれも、結局協議の進展がなく、8月1日(木)に突然「9月1日(日)から関税を追加する」と発表した。こちらは、8月初の世界株の下落を引き起こした。

「2度あることは3度ある」のだろう。足元の「米中通商交渉進展期待」による株価上昇は危うい。述べてきたように、日本株(および世界株)の方向性は、下落だと引き続き見込む。ただし、いかに危うい期待とは言っても、短期的には「勢いだけで」株価が続伸するリスクは、否定できない。そのため、今週に限って、日経平均株価のレンジは2万1200円~2万2200円を見込む。

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