日経平均株価1万6000円予想を変えない理由 2度あることは3度あっても不思議ではない
とは言っても、最近公表された経済指標だけを眺めても、たとえばアメリカの8月ISM製造業指数は、分岐点である50を割り込み、世界的な製造業中心の景気悪化が同国にも影を落としている。8月の雇用統計でも、まだ「悪化」と呼ぶには程遠いが、非農業部門雇用者数の前月比は13.0万人増に減速し、6月の17.8万人増、7月の15.9万人増から伸び悩み傾向を強めている。
日本では、10月1日(火)からの消費増税前に、一部高額商品では駆け込み買いも報じられてはいるが、全般には駆け込み需要は弱いようだ。そのため10月から個人消費の大幅な反動減もないだろうが、駆け込んで物を買う気もしないほど消費者の心理が弱っているとも言える。実際、消費者心理を示す消費者態度指数は、2017年11月をピークとした低下傾向が継続しているどころか、ここ数か月はつるべ落としのように悪化している。
欧州も少し長い目でみると、英国もドイツも4~6月の実質経済成長率は、前期比ベースでマイナスを記録した。7~9月もマイナス成長となり、定義上リセッション(景気後退)に陥るとの観測が有力となっている。
こうした経済環境の悪化も背景に、アナリスト予想の平均値では、日米の企業収益見通しの下方修正に歯止めがかからない。アメリカのファクトセット社が集計している先行き12カ月ベースのEPS(1株当たり利益)前年比の予想値をみると、毎週毎週、日米ともに下方修正が続いている。アナリストが企業に取材し、現場の悲観的な声を反映しているためだろう。
アメリカは現時点では「かつかつの増益」(9月13日(金)時点の予想値で、S&P500採用銘柄全体では2.6%増益)だが、このままの下方修正ペースでは、早晩減益に陥るものと懸念される。日本は東証1部全銘柄ベースで、同日時点の予想値では8.9%減益が予想されている。近年の最低記録が、2016年9月時点の7.7%減益見通しであったが、それを超える収益の悪化状況だ。
市場の「米中通商交渉の進展期待」はかなり危うい
では、こうした経済環境の悪化、収益見通しの下方修正、中央銀行の緩和姿勢、長期金利の(強含みはあるが)低位推移といった状況に対し、なぜ最近の株価ばかりが上昇しているのか、という点だが、いくつかの要因が唱えられてはいる。
たとえば「売り方の買い戻しが入った」とか、「中央銀行の緩和でカネ余りが進んでいるからだ」、といったようなものだ。ただ、いきなり先々週途中からカネ余りになったわけでもないから、「売り方の買い戻し」はともかく、説得力のある要因ではないだろう。
すると、主に株価上昇の材料とされたのは、「米中通商交渉進展期待」だと考えられる。そうした期待を招いた報道は数としては多くあったように思うが、具体的に材料になったものでは、主として2種類のものがあったと考える。1つは、米中間ですべての事項で合意できなくても、一部の事項での合意が、全体から切り離して先行してなされるのではないかという期待だ(そうした一部事項での合意が、「暫定合意」という言葉で報じられている)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら