ヤフーはテレビ局との連係で動画を拡充 ユーチューブに“宣戦布告” 

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ユーチューブに“宣戦布告” ヤフーはテレビ局との連係で動画を拡充

まさに「宣戦布告」--。多くのテレビ局関係幹部が詰めかけた2月18日の放送シンポジウムで、講演に立ったヤフーの井上雅博社長は「違法な動画投稿サイトは文句を言われたら消す、と言っているがこれはダメ。消したときに(ユーザーは)もう見終わっている」と発言した。当然、意識しているのは、世界最大の動画投稿サイトである「ユーチューブ」だ。

普段は講演の依頼をほとんど断っている井上社長だが、今回は特別な意味を持っていた。

「テレビ局とパートナーシップを強化する絶好の機会」ととらえ、4カ月前から周到な準備を重ねてきた。実績づくりとして、直近にNHKやフジテレビのネット放送の料金決済代行で提携し、2月3日からTBSが期間限定で始めたお笑い番組「ザ・イロモネア」やドラマ「ラブシャッフル」の無料ネット配信でも連携した。

それだけでなく、投稿された動画を事前審査する独自の手法で運営していた「ヤフー・ビデオキャスト」は、2月16日付で投稿受け付けを中止。4月にはサイト自体も閉鎖する。これもテレビ局を中心に大手事業者との連携を強化する姿勢の現れだろう。しかし「著作権侵害を行わない、という姿勢は評価できるが、ヤフーとしても社会貢献でやっているわけではない。ヤフーだけが稼ぎ、こちらが稼げないような連携はできない。ビジネスモデルの作り方が難しい」(民放幹部)という声はある。

ユーチューブに対する民間放送連盟の見解は「違法な動画を削除するのはサイトの責任。ユーチューブが提案している枠組みは、その作業をテレビ局側にもやらせようとするもので、受け入れられない」というもの。ただし、グーグルの傘下でユーチューブは著作権保護の姿勢を明確化しており、NHKが公式チャンネルを設置するなど、必ずしも四面楚歌ではない。

「コンテンツの権利者、生産者とヤフーが合法的に、タイムリーに良い品質で動画を見せることができれば、違法投稿を撲滅し、正常な状態になる」というのが井上社長の持論。テレビがネットを敵対視するのではなく、「ネットと組む時代」へ移行していく中、ヤフー流はどこまで放送事業者との連携を増やせるか。

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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