インスタ「チェーンメール騒ぎ」奇妙な既視感

なぜセレブたちはだまされてしまったのか

こうした「デマ」を、故意に発生させた虚偽情報として起訴することは、正しいが適当とは言えないだろう。情報の発信元は決して表に現れない。スパムのように金銭を要求するわけでもない。ではいったい何なのか? ザックを追い払う祈りや呪文?

インスタグラムに投稿された偽情報の一部を抜き出してみると、出来はよくないが真面目な詩のようだ。

 あなたがこれまで投稿したものはすべて

 今日から公開されます

 明日から始まります

 インスタグラムの新しい規約が

こうして見てみると、最初に読んだときはくだらないと思えた内容が真剣に捉えるべきもののように思える。その文章は、法律に言及しながら、インスタグラムが「明日」から実施するとされることは、このテキストをペーストすれば阻止できる、と説明する。そしてインスタグラムに対し「この声明文をもって、私は通告します」と宣言している。

大手ソーシャルメディアの決まり文句

投稿に書かれた文言やトーンには見覚えがある。例えば、インスタグラムの利用規約にはこう書かれている。「弊社が利用者のコンテンツの権利の帰属を主張することはありませんが、利用者はコンテンツを使用するためのライセンスを弊社に付与します」。

「コンテンツをシェア、投稿またはアップロードする場合」、利用者は「弊社が(利用者のプライバシー設定およびアプリ設定に沿って)利用者のコンテンツをホスト、使用、配信、変更、運営、複製、公演、公開あるいは翻訳し、また派生作品を作成する非独占的、使用料なしの、譲渡可能、サブライセンス可能な全世界を対象としたライセンスを付与するものとします」とある。

そして「このライセンス付与は、利用者がコンテンツやアカウントを削除することにより、いつでも終了させることができます」と書かれている(だが、その次の文章は「ただし」で始まる)。

これは決まり文句で、大手ソーシャルメディアアプリはどこも似たような利用規約を設けている。私たちが偽情報を拡散させてしまうサービスもまた、めったに読まれることのない複雑な規定と、一方的ででっち上げても差し支えなさそうな「合意」に依存している。

オンライン上では、私たちは呪文のような言葉で定義され、支配されている世界に生きている。それ以外の何について私たちは投稿すればよいのだろうか?

(執筆:John Herrman、翻訳:中丸碧)

(C)2019 The New York Times News Services 

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