海に漂う「プラスチックごみ」の深刻すぎる影響 生物の体内にも蓄積、使用量削減の必要性

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――しかし、生物が体の中からプラスチックを排泄してしまえば、問題はないのでは?

生物の体の中で、プラスチック中の有害化学物質が体の組織に取り込まれ、蓄積されていくとすると、生物の体に悪影響を及ぼす恐れがあります。

――プラスチック中の有害化学物質が生物の体内の組織に取り込まれ、蓄積されたケースは、研究で明らかになっているのですか。

私たちが続けているベーリング海のハシボソミズナギドリの調査では、プラスチックから化学物質が消化液に溶けだし、それが肝臓や脂肪にたまってくることがわかってきました。

さらに私たちの最近の研究で、ハワイ、ガラパゴス諸島、マリオン島などの海鳥についてもプラスチック添加剤の体組織への移行・蓄積が確認され、環境化学討論会で発表しました。

プラスチックの生物への影響

また、魚が食べたプラスチックから体内の組織への化学物質の移行・蓄積が確認されたとの報告もあります。

さらに、オーストラリアの研究者が今年6月に発表した論文は、プラスチックを摂食することが多いことが知られているアカアシミズナギドリについて調べた結果、プラスチックが健康に悪影響を及ぼしている可能性があることがわかりました。プラスチックを多く取り込んでいる鳥は、血中の中性脂肪が高く、血中のカルシウムが減っていたのです。

血中のカルシウムが減ると、骨やくちばしが弱り、卵の殻が薄くなり、個体数の減少につながります。血中のコレステロール濃度が高いのは、万病のもとです。

私たち人間の場合、血液検査でコレステロールが高いと言われたら、食べ物に気をつけるでしょう。それと同じで、鳥も血中のコレステロールが高ければ、食べ物に気をつける、つまり、食べ物にプラスチックが混じらないようにするべきなのです。

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