海に漂う「プラスチックごみ」の深刻すぎる影響 生物の体内にも蓄積、使用量削減の必要性

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日本の陸地もプラごみの流出源、使い捨てプラの削減を

――サイエンス誌2015年2月号は、陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量(2010年推計)の国別ランキングを掲載しました。1位中国、2位インドネシア、3位フィリピン、4位ベトナムとアジアの国が続き、日本は30位。ごみの収集・処理体制が整っている日本は、海にプラごみを流出させている訳ではない、体制が整っていない途上国を支援することでこの問題に貢献できる、という指摘を聞きます。

日本は廃棄物の収集・処理やリサイクルが進んでいるので、海に出て行くプラごみは少ないと思われるかもしれないですね。しかし、そんなことはありません。東京の荒川河川敷の写真を見て下さい。2016年5月28日に私が撮影しました。見えるものの大半は、ペットボトルですよね。ペットボトルの回収率は大変高く、2015年で88.9%、回収されなかったのは11.1%でした。

河口から3km上流の荒川河川敷(高田教授提供)

それでも年間のペットボトル消費量は225億本もあるので、未回収のものは年間25億本にのぼります。荒川で河岸清掃をしているボランティア団体が1年間に拾うペットボトルは4万本を超えると聞きました。リサイクル率が高くても100%でない限り、大量に使えば大量に排出され、環境を汚染してしまいます。海に流れ出れば、海流や風の流れに乗り、何千kmも運ばれます。

プラスチックの消費をどうやって抑えるか

――私たちは、どうするべきなのでしょうか。

まず、レジ袋、ペットボトル、コンビニの弁当箱、プラスチック製ストローなどの使い捨てプラスチックをなるべく減らしていくことを基本に据えるべきです。

国連環境計画(UNEP)によると、容器包装に使われた使い捨てプラスチックの廃棄量をみると、日本は世界第2位。アメリカに次いで多い。

レジ袋の有料化などの規制、マイボトル用の給水器の公共施設への設置、量り売りの促進、過剰包装の見直し、食品包装用のプラスチックのバイオプラスチックへの置き換えなど、業界、市民、行政が取り組める対策はたくさんあります。

政府は「レジ袋」「ペットボトル」「ストロー」「使い捨て弁当箱」などの使い捨てプラスチックは環境負荷が高いので、使用を減らしていくべきであるという考え方や指針の表明を行うべきです。

――大阪でG20が出した「ブルーオーシャンビジョン」は、2050年までに海へのプラスチックの新たな流入をゼロにする、としていますが、不十分ですか。

どうやってゼロにもって行くのか示しておらず、プラスチックの使用削減に踏み込んでいません。昨年カナダで開かれたG7が出した海洋プラスチック憲章では、日本とアメリカは不参加でしたが、「使い捨てプラスチックの削減が第一」と述べられています。大量消費はそのままで、大量リサイクル、大量焼却では持続性はないし、海への流入を減らすことはできても、温暖化が進んでしまうと思います。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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