日露交渉「進展」は日本にデメリットでしかない 日本のメディアの的外れな批判は痛い

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批判するのであれば、次のような問題提起があるのではないか。「安倍首相はなぜ領土を放棄してまで、平和条約を結ぼうとするのか」「なぜ領土返還という言葉を使わなくなったのか」「ロシアに配慮したら、ロシアが折れるとでも思うのか」「平和条約を結んだところで日本にメリットがないのに、なぜ条約締結にこだわるのか」「領土問題をなぜ自分の代で終わらせると宣言し、自分の手で日本の立場を弱くしようとするのか」――。

こうした批判であれば、国民の北方領問題に対する認識はもう少し正常化したかもしれない。

「国益に反した行為」を批判せよ

安倍政権の対露外交は、完全に根本的なところから間違っている。これ自体大問題である。しかし、これに関する日本メディアの報道もまた、大きな問題なのだ。根本的な間違いを指摘せずに、間違った方針を容認したうえで、表面的で何の意味もない批判、間違った政府の方針の是正にまったくつながらない批判しかしていない。

この程度の批判しかしないメディアは「第4権力」としての役割を果たしていると言えるのだろうか。政府が外交において譲歩する際、それを厳しく追及して、「この譲歩は本当に妥当なのか」「この譲歩は最終的に日本のためになるのか」ということははっきりさせなければならない。

そして、もし政府による譲歩は長期的に日本の国益に反しているのであれば、それを厳しく批判し、政府は国益に反した行為をするという事実を伝えなければならないのだ。

メディアの中でも、とくにおかしいと感じるのは普段から安倍政権を批判するメディアである。完全に間違っている対露外交に関する報道こそが反安倍政権メディアの腕の見せどころのはずだ。例えば筆者は、特定秘密保護法や集団的自衛権行使、安保法制、テロ等準備罪などは日本にとって必要な法律や決定だと考えているが、反政権メディアはこうした正しい決定は批判するのに対し、間違っている政策についてはまったく批判していない。

日本にとってメディア報道の“正常化”はこれから大きな課題となるだろう。

グレンコ・アンドリー 国際政治学者、日本研究者

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Andrii Gurenko

1987年、ウクライナ・キエフ生まれ。2010年から2011年まで早稲田大学に語学留学。同年、日本語能力検定試験1級合格。2012年キエフ国立大学日本語専攻卒業。2013年、京都大学へ留学。2019年3月、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程指導認定退学。アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門優秀賞(2016年)。ウクライナ情勢、世界情勢について講演・執筆活動を行っている。著書に『プーチン幻想』(PHP新書)、『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』(育鵬社)。

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