いい子があっけなく「ひきこもり」化する原因 引き金は勉強優先の「勝ち組教育」

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このような親子関係は、「親への執拗な攻撃、抑圧、束縛、依存、そして一線を超えたときには殺傷事件に至る」という点で、一般的な異性関係のストーカーと構造がよく似ているため、押川氏は「家庭内ストーカー」と命名したという。

暴君と化した子どもを見ると、なぜ親をここまで攻撃するのかと首を傾げずにはいられない。だが、子どもの訴えをじっくり聞くと、親がやってきたことに対するしっぺ返しとしか思えない。

過干渉でも心の触れ合いがなかった

例えば、幼い頃から勉強を強要され、友達と遊ぶこともできなかったとか、成績が悪いと口をきいてもらえなかったとか、少しでも口答えすると、「親に向かってどういう口のきき方をするんだ!」と怒鳴られたという話を聞くことが多い。

『子どもを攻撃せずにはいられない親』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

また、子どもが挫折や失敗に直面したときには、親は慰めるどころか逆に「どうしてできないんだ」「どうしてそんなにだめなんだ」などと叱責したという話もしばしば聞く。

こういう家庭環境では、つねに緊張感が漂っていただろうし、子どもが安心感を得るのも難しかっただろう。したがって、子どもが「家庭内ストーカー」になった背景にはほとんどの場合、無自覚のまま子どもを攻撃したり、支配したりした親の存在があると私は考えている。

押川氏も、「家庭内ストーカーとして、『暴君』と成り果てている子供たちも、その生育過程においては、親からの攻撃や抑圧、束縛などを受けてきている。過干渉と言えるほどの育て方をされる一方で、そこに心の触れ合いはなく、強い孤独を感じながら生きてきたのだ」(同書)と述べている。

まったく同感だ。つまり、「親からの攻撃や抑圧、束縛など」への復讐として子どもが「家庭内ストーカー」になったという見方もできるわけで、親の自業自得と言えなくもない。

片田 珠美 精神科医

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かただ たまみ / Tamami Katada

広島県生まれ。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。2003年度~2016年度、京都大学非常勤講師。臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。著書に『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)、『賢く「言い返す」技術』(三笠書房)、『他人をコントロールせずにはいられない人』(朝日新書)など多数。

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