いい子があっけなく「ひきこもり」化する原因 引き金は勉強優先の「勝ち組教育」

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子どもが家庭内で暴君化すると、「家庭内ストーカー」になることもある。「家庭内ストーカー」は、精神障害者移送サービスの「トキワ精神保健事務所」を創業した押川剛氏によれば、「年齢は30代から40代が主で、ひきこもりや無就労の状態が長く続いている。暴言や束縛で親を苦しめる一方で、精神科への通院歴があることも多く、家族は本人をどのように導いたらいいのか、わからないまま手をこまぬいている」(『「子供を殺してください」という親たち』)というものだ。

もう1つの特徴として押川氏は、「本人に立派な学歴や経歴がついていること」を挙げている。「中学や高校からの不登校というよりは、高校までは進学校に進みながら、大学受験で失敗した例や、大学卒業後、それなりの企業に就職したが短期間で離職したような例が多い。強烈な挫折感を味わいながらも、『勉強ができる』という自負がある」(同書)。

医者からも相談が多い「子どものひきこもり」

こうしたケースは、押川氏の事務所へもたらされる相談事例のなかで近年爆発的に増えているそうだが、私自身も同様のケースについて相談を受けることが少なくない。だいたい、知り合いの医者からの相談で、「子どもがひきこもっていて、家庭内暴力もひどい。どうしたらいいか」というものだ。押川氏の印象とは少々異なり、中学や高校で不登校になったケースが多いという印象を私は抱いている。

例えば、大きくなったら医者になるのが当然という雰囲気の家庭で育ち、小学校低学年の頃から中学受験のための塾に通って、私立の中高一貫の進学校に入学したものの、できる子ばかりが集まっている進学校では成績が下位に低迷し、そこで不登校になったケースがある。あるいは、名門大学の医学部への入学を目指して何年も浪人したが、どうしても合格できず、ひきこもるようになったケースもある。

医者以外の道を選んでも、それまでの自分を支えていた「勉強ができる」という自負が災いするのか、なかなかうまくいかない。もう一度大学受験に挑戦して医学部以外の学部に入っても、「あんなレベルの低いやつらと一緒に勉強するのは嫌だ」と言って中退したり、やっと仕事が見つかっても、「思っていた仕事と違う」と言ってすぐに辞めたりする。

当然、無就労の状態が長く続くわけで、結果的にひきこもりになる。そして、家庭内で「こんなふうになったのは、お前のせいだ」と何時間でも親を責め続けることもあれば、親を蹴ったり突き飛ばしたりすることもある。しかも、就寝中の親を起こして暴言を吐いたり、暴力を振るったりすることもあるので、親は慢性的な睡眠不足に陥り、心身ともに疲れ切る。

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