「おっさんずラブ」女性の心にグッと刺さる理由 BLファンをTVの前に引っ張ってこられた良作

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徳尾:仕上がった第1稿を持って、テレビ局に打ち合わせに行きます。そこでプロデューサーと「このシーンとこのシーンの順番を入れ替えよう」とか「ここのセリフはカットしよう」と話し合います。仮に、ラストでルームメートが主人公に押し迫ってキスすることが決まっていたとして、なぜルームメートがそういう気持ちになったのか、中盤での描写を足そうか、などと話し合うわけです。

第2稿は第1稿ほど時間がもらえないのですが、数日間持ち帰ります。そして、また最初の3日間は浅いプールの前で恐怖におびえているわけです。早く書けよ、と(笑)。

河崎:学習しましょうよ!

学ぶことが多い現場

徳尾:それから第3稿、第4稿と重ねていきまして、1冊の真っ白な表紙の「準備稿」が出来上がります。そこで初めて、脚本が役者さんや美術スタッフなどの手に渡るんです。

ドラマによっては女優さんから「こんなセリフは言えない」などとリアクションがきて変更することがあります。昔、あるドラマで「おばさん」と書いたら「『おばさん』ってどういう意味かしら?」と言われて変更したことがありました。いや、役だから(笑)。

準備稿を渡して、だいたい1週間。その間に小道具を揃えたり、ロケハン(撮影する場所を調べること)をしたりします。ロケハンの結果によって、スタッフから「場所が変更になった」などとお願いされることもあるので、それを反映させた「決定稿」を作るわけです。準備稿と決定稿の間はそんなに日がないので、家に帰ったら迷うことなくプールの中に入ります。たとえですよ。家にプールがあるわけではありません。

河崎環(かわさき たまき)/コラムニスト。
1973年京都府生まれ、神奈川県育ち。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多岐にわたる分野で記事・コラム連載執筆を続ける。欧州2カ国(スイス、英国)での暮らしを経て帰国後はWebメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、日本政府海外広報誌などへ多数寄稿。2019年より立教大学社会学部兼任講師も務める。社会人女子と中学生男子の母(撮影:原貴彦)

河崎:わかってますよ! でも、そうやって自分で時間を管理していくのも重要な仕事の一部なんですね。お話をうかがっていると、「おっさんずラブ」では、徳尾さんは女性の製作者たちの中にポツンと1人いてもちょうどいいタイプの男性のような気がします。やりやすかったのではないでしょうか?

徳尾:はい。女性というのもあると思いますが、とても尊敬している方たちなので自分としては、安心感がありました。

テレビ業界はまだ男性のプロデューサーが多いと思うのですが、ちょっと今の時代に照らし合わせたときにマズいんじゃないかという表現を求められることがあって、「いや……そのまま書いたら、俺が炎上するぞ」と思うことも過去にはありました。そういうときは「これはやめたほうがいいです」「別の表現に変えたほうがいいかもしれません」と打ち合わせの席で言います。この辺りのことは時代によって変わるもの、変わらないものがあるので、つねに周りの方たちに聞いてみたりして、自分自身も学んでいくことが多いです。

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