「誰にでも社交的」目指す日本的会社員の問題点 「相性の悪い人」と付き合う時に役立つ作法
継続的な関係性をつくらなければ心を開いてはくれない
「相手の心を開かせるにはどうしたらいいですか?」というのは、若いビジネスマンからよく聞かれる質問の1つです。営業や取引先の仕事相手、あるいは職場の上司、部下に対して「もうちょっと心を開いて、本音で話してほしい」と感じている人は少なくないようです。
ただ、「すぐに心を開いてもらうにはどうすればいいか」というテクニックを求めている人には申し訳ないのですが、本当に相手に「心を開いてもらう」には、ある程度の「時間の積み重ね」が必要です。小手先のテクニックだけでは、本当に胸襟(きょうきん)を開いてもらう、ということはできません。なぜなら、どんな人の心にも、多少なりとも「対人恐怖」があるからです。
どれほど豪胆に見える人でも、人は心のどこかで「この人は自分のことを傷つけるのではないか」という恐怖心を抱いています。この無意識レベルの恐怖心というものは、継続的に顔を合わせ、少しずつ「この人は自分を傷つけない」という信頼を積み重ねていくことでしか、ほぐすことができません。
ここに、大きなボタンのかけ違いがあります。つまり、「親しくなる」ためには、「安心を与える」という前段階があるということなのです。この段階があることに、多くの人は気づいていません。だから、いきなり「親しくなろう」と焦るのです。
僕は思春期精神医学を専門としていましたので、病院の外来や診療所で、多くの10代の人たちを診ていました。当然のことですが、1、2回、外来でお話しするぐらいでは、医者に心を開いてはくれません。2週間に1回など、定期的に顔を合わせて数カ月、場合によっては1年ぐらいの時間をかけてようやく、「僕は実は、こんなことで困っているんだ」という、悩みの本丸を少しずつ話してくれるようになる。そういうものでした。