「誰にでも社交的」目指す日本的会社員の問題点 「相性の悪い人」と付き合う時に役立つ作法

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一見、いつもニコニコして社交的で、同僚とも取引先とも上手に人間関係をつくっているように見えた人が、実は途方もなくストレスを溜め込んでいたり、実は相手からまったく信用されていなかったり、ということがあります。こういう人は、心理学で言うところの「反動形成」というパターンに陥ってしまっていることがあります。

反動形成とは、自分の本心とは裏腹の行動を強迫的にとってしまうことを言います。例えば、自分の苦手な相手や、相手の機嫌が悪い時に、相手を避けるのではなく逆に自分から近づいていって、相手のご機嫌を取ろうとするといった行動傾向のことです。

なぜそういう行動を取るのかというと、理論的には「自分の中にある相手に対する嫌悪感や苦手意識を、そうした感情とは真逆の行動をすることによって、(相手から、また、自分からも)覆い隠そうとする」と説明されます。実際の感情とは裏腹の行動を取るわけですから、当然、そういう人は一見フレンドリーで社交的に見えても、その笑顔や言動にはどこか無理があり、取ってつけた不自然なものになってしまいがちです。

すると、そうした不自然な笑顔や取ってつけたような態度が、相手の不安や警戒心を駆り立て、さらに関係性がうまくいかなくなる、という悪循環が起こる。日本のサラリーマン社会のコミュニケーションでは、しばしばそういう、実は難儀な問題が起きていると思います。

「構えない、準備をしない、自然体でいる」

仕事ですから当然、苦手な相手や、相性の悪い相手とも付き合っていかなければいけません。重要なことは、自分が相手に対して苦手意識を持っていること、あるいは相手との相性がいま一つよくない、ということを認めてしまうことです。そのうえで、できるだけ構えず、自然体で接するようにする。

僕はある時期から、病院の外来でも、プライベートで人に会うときでも、苦手な相手に対して下手な「準備」をしないように心がけるようになりました。

私たちは、苦手な相手に対して「こう言われたら、こう言い返そう」という想像を巡らしてしまいがちです。僕も外来で苦手なクライアント(来談者)を相手にする時には、よく「前回の外来ではあの人はこんなことを言っていた。だから今日外来に来たときは、こんな話をしよう……」と、さまざまな予測や準備をしていたものです。

ところが、こうした予測や準備は、ほぼ完璧に裏目に出ました。考えてみるとそれは当然のことです。相手(クライアント)の人生には、次に会うまでの1〜2週間で必ず新しいことが起きているからです。だから相手は当然前回とは違う問題について話し始めるし、こちらが想定したのとはまったく違う反応をしてくる。

さらに、こちらの心の中に「相手をなんとか思いどおりにコントロールしたい」という気持ちがあると、往々にしてそれは相手にも見透かされ、反発を招いてしまう(それは、こちらがどれほど丁寧に対応しようとしても)ことも少なくありません。

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