教育熱心な親が「人のせいにする子」を作るワケ 「宿題廃止」の中学校校長が明かす真理

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アニメ、アイドル、電車、プログラミング、ゲーム――。たとえそれが大人に理解できないことであっても何かに熱中できるのは幸せなことなのです。

ゲームにばかり没頭する子への声のかけ方

ただし、没頭していることが完全な趣味として自己完結していて、その状態が長引いているのであれば、アドバイスできることがあるかもしれません。

もちろん、趣味として楽しむことはいいのです。しかし、あらゆる知識やスキルは、誰かに伝えた瞬間から「意味のあるもの」「価値を発揮するもの」に変化すると教えてもよいのではないかと思います。

例えば、「好きなアニメのことをTwitterでツイートしたら、めちゃくちゃ喜ばれた」といった体験をどんどんさせることが大切です。なぜなら、自分が世の中に対して価値貢献できている感覚を子どものときから積むことが、社会に出たときに積極的に外部に働きかけていく姿勢、つまり「主体性」に影響してくるからです。

1人の世界で没入していた何かに、たった1つの「いいね!」がつくだけでいいのです。反応がもらえると他者に意識が向かうので、それ以降、趣味を楽しむときにも「発信」を意識して考えたり、情報収集したりできるようになります。

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子どもが内向きに没頭しているとき、それを外に向けるアプローチに変えさせるよう、きっかけは大人がつくってあげてもいいと思います。

もちろん、うわべだけ話を合わせようと、無理にその領域に詳しくなる必要はありません。わからないなりに質問をする。それも立派なフィードバックです。

「なんかこれ面白そうだけど、説明してくれない?」

といって話を聞き、

「なるほど。これってお父さんはこう感じたんだけど、君はどう思うの?」

といったように、単なるうなずき以上のフィードバックをちゃんとしてあげる。そのときに、本人も気がついていない価値(その子の得意なことやプロセス)を言語化してあげられると理想的です。

工藤 勇一 横浜創英中学・高等学校校長

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くどう ゆういち / Yuichi Kudo

横浜創英中学・高等学校校長。1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長として宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行。2020年より現職。教育再生実行会議委員、内閣府 規制改革推進会議専門委員、経済産業省 産業構造審議会臨時委員など、公職を歴任。著書多数。

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